球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

アストロズの「サイン盗み」問題 タブーを破った告発が気にかかる

[ 2019年11月17日 10:00 ]

 ワールドシリーズ(WS)で敗れたアストロズだが、今季で3年連続100勝超、チームは絶頂期だ。そこにア軍がWSを勝った17年、「相手チームのサイン盗みをしていた」と当時在籍したマイク・ファイアーズ投手(現アスレチックス)が電子メディアに告発。MLB(大リーグ機構)は「関係者の聞き取り調査開始」。ア軍は「調査に全面協力」を約束した。

 手口は単純。ホーム球場中堅外野のテレビカメラで撮った捕手のサイン映像をベンチ近くの小部屋のモニターに送り、サイン分析の係員が球種をごみ入れの缶を叩いて打者に知らせる。球界は冷静に「機器使用は規則で禁止だが、サイン盗みは全球団が昔からやっている」。メディアの扱いは分かれた。多かったのは、伝統の盗み技術の解説を交えた報道だ。

 一方でア軍批判もある。「ア軍球団内部の文化が生んだ汚点」とするのはデータ野球で最先端を走る球団をつくったジェフ・ルノーGM(52)への違和感だ。11年に球団を買収したジム・クレイン・オーナーがカージナルスから引き抜きGMに据えた。投資会社からカ軍入りし8年かけてデータ網をつくった新野球人。新GMはスカウトのほとんどを解雇し、データや映像、統計の分析家、数学者、物理学者と入れ替えた。そのGM手腕は3年ごとの成績に表れる。11年から13年はシーズン100敗超で最下位、ドラフト上位指名権の獲得を続けた。14年から16年に勝率5割球団となり、17年から今年が100勝超。「我が球団の得はどこかの球団の損。ウィンウィンはまれだ」と冷たく割り切る。熱血野球記者とは合いそうもない。MLBの調査結果がどうなるかだが、GMよりロッカー内の秘密厳守を破ったファイアーズの方が気にかかる。 (野次馬)

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