球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

「歴史的協定」4カ月で抹殺も想定内?

[ 2019年4月14日 05:30 ]

 トランプ政権は、大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会合同で昨年12月にキューバ野球連盟と結んだキューバ選手移籍協定を一通の書簡で吹き飛ばした。「選手と契約した球団がキューバ野球連盟に支払う譲渡金(選手契約金の25%にあたる金額)は承認できない。これはキューバ政府の歳入になる。我が国の貿易法違反だ」との財務省からMLBへの通告だ。MLBは財務省に話し合いを申し入れたが、玄関払いにされてしまった。

 「歴史的協定」とまで言われた合意だが、その一方で法的に無理、と指摘する声も多かった。「MLBの打った大ファウル。トランプ大統領は直ちにファウル宣告を」と言うのだ。ホワイトハウスも「我が国とのビジネスでキューバが利益を得る取引は制限される」と警告していた。

 オバマ政権はその末期、キューバとの国交を回復させた。米国からの観光が一部認められたが、キューバ封鎖に関わる法律は以前と同じ。MLB、選手会のロビー活動も反オバマで固まるトランプ政権は動かせなかった。

 MLBは「この協定で人身売買のような亡命援助組織の介入を防止できる」とPRを続けた。しかし、キューバ革命後、社会主義政権を嫌い米国に亡命した多くのキューバ系米国人の団体は、「自由を認めない国による人身売買制度」と反論し、MLB、選手会は立ち往生になった。

 「歴史的協定」は合意4カ月で抹殺された。ただし、球団間に動揺は見られない。地球温暖化防止の「パリ協定」、自由貿易の「TPP」など、重要な国際協定からツイッターの一言で脱退したトランプ大統領だ。どの球団も今度の動きを予期していたのかも…。(野次馬)

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