球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

バットだけでなく記者も折れた?リベラのカッター

[ 2019年1月27日 05:30 ]

 19年の殿堂入りに4選手が選ばれた。先発投手のロイ・ハラデー、マイク・ムシーナ、指名打者でエドガー・マルティネス、そしてヤンキースの守護神マリアノ・リベラ(敬称略、以下同)。納得の顔触れだ。特にリベラは引退5年目の殿堂入り資格取得初年で全米野球記者協会の投票史上初の満票選出(殿堂入りは75%以上の得票)。

 記録で選ぶのなら簡単だが、記者の好みが反映する投票だから満票選出は難しい…記者にはへそ曲がりが多いのだ。球史に名を残す大選手が挑んだ“満票の壁”。最後の4割打者テッド・ウィリアムズは、満票に20票足らなかった。彼のライバル、56試合連続安打のジョー・ディマジオは満票どころか資格取得して殿堂入りまで4年もかかった。史上初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンも満票に36票届かず、第1回記者投票で殿堂入りしたタイ・カッブは満票に4票不足、ベーブ・ルースは11人の記者が「ノー」だった。これまで満票に最も接近したのはケン・グリフィー・ジュニアで3票不足。そして、ついにリベラの満票(425人)での殿堂入り。

 実はリベラも際どかった。「リベラはベスト・クローザーではない。9回しか投げないのが気に入らない。リッチ・ゴセージ、ブルース・スーターの殿堂入り2人は複数回を何度も投げている」と主張する記者がいた。マサチューセッツ州の地方紙のビル・バルー記者。「1回限定はジョー・トーリ監督(現大リーグ機構専務理事)の戦術、悪いのは監督」と同僚が説得しても「ノー」

 で、どうなった?バルー記者は投票直前に心変わり。「プレー時間の長さでリベラの満票を阻んだ記者で名を残したくなかった」とコラムで告白。読者もホッとした。

 リベラの成績は、球史最高652セーブ、オールスター選出13回、ワールドシリーズ制覇5度、「満票で殿堂入りとは特別な出来事」と喜んだ。めでたし、めでたし。 (野次馬)

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