球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

いびつな多様性を象徴 WS初の非白人監督対決

[ 2018年11月4日 05:30 ]

 「大リーグ(MLB)は監督に非白人を採用することに消極的」とメディアは指摘する。今季のワールドシリーズはレッドソックスのアレックス・コーラ監督(プエルトリコ)がドジャースのデーブ・ロバーツ監督(父は黒人、母は日本人)を破ったが、これは114回のシリーズ史上初めての非白人監督の対決だった。

 選手は全体の42・5%が非白人だ。それに比べ非白人監督がいかに少ないかが“史上初”に示された、というのだ。10年に30球団で10人の非白人監督がいた。それが15年に1人に減り、このオフ6人に回復した。

 人種の多様性を誇る国の“国技”でこの現状はどうしたことか…。ニューヨーク・タイムズ紙記者の問いかけにロブ・マンフレッド・コミッショナーが答えた。「球団が監督候補との面接で質問する内容が野球の進歩で変化した。今はデータ分析力に焦点を絞って質問するからだ」。記者は一瞬たじろいだ、という。当然だ。「非白人は分析力がない」と言っているも同然ではないか。

 問題発言はともかく、ドラフト指名選手をデータ分析で絞り、スカウトを減らすことから始まった球団の情報改革はグラウンドの戦法を変え、監督採用にも及んできた。野球の現場で蓄えた経験に加え、データの活用能力が監督には必須となった。

 コーラ監督の兄ジョーイ・コーラは二塁手として11年、その後、コーチ生活11年、今もパイレーツの三塁コーチで、これまで7球団の面接に招かれた。「数球団の面接は大学の学業成績まで調べ、真剣だった。残りは茶番。MLBの“面接には非白人を入れること”の通達守りの“にぎやかし役”さ」。しかし、大リーグのコーチの半分は非白人。事態は好転、とみる。「監督になりワールドシリーズ制覇の夢は弟を通じて果たした。今の望みは非白人監督採用のスピードアップだ」。夢は実現するだろうか。 (野次馬)

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