球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“三振かホームランか”にファン飽き飽き

[ 2018年9月23日 05:30 ]

 プレーオフに向け最後の熱戦が続く。しかし、観客動員はさえない。昨季比1試合平均約1500人の観客減だ。結果、2年連続で1試合平均3万人割れが迫る。大リーグ機構(MLB)は危機感を募らせた。「原因はボール・イン・プレー(ボールが野手の間を動く)が少なくなったため」。シフトが定着し、打者は野手の頭上を越えるフライ打球を狙う。投手は全力投球の継投策。野手がボールと紡ぐ豊かな細部が消え、「三振かホームランかの野球にファンが飽きた」。

 「今季は大リーグ史上初めて三振数がヒット数を上回るシーズンになるだろう。野球の新たな危機」と8月15日付のニューヨーク・タイムズ紙。この時点で安打は3万678、三振は3万569だった。それから1カ月あまりの先週18日、安打3万8033、三振3万8038とついに三振数が安打数を上回った。この差は日を追って広がっている。「試合で投手が投げる200球超の大半がイン・プレーにならない。これでは娯楽産業とは言えない。ファンは審判員のコールを見に来るわけではない」とレイズのエリク・ニアンダーGM。「我々ユニホーム組はフロントが指示する勝つためのデータに沿った野球を目指し努力する。その結果が今の野球ではないか」と選手たち。

 15年前、9回投げて平均8・4の三振が取れる投手は7人しかいなかった。今は大リーグの平均が8・4だ。投手のレベルは上がり、打率は下がったが、安打に占める本塁打の割合は14年の10%から15年11・7%、16年13・3%、17年14・5%と増加した。球界が集めたビッグデータが、確実にアウトを取るのは三振、確実に得点するのは本塁打…と野球を変えてしまったのだ。

 MLBは「二塁の両サイドの野手は2人まで」、「継投の人数制限」などの規則改正を視野に入れるが、選手会はどう出るのか。 (野次馬)

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