球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“常識的療法”トミー・ジョン手術の成功率は…

[ 2018年7月1日 05:30 ]

 損傷した肘のじん帯(正確には、上腕と前腕をつなぎ合わせる内側側副じん帯)に自分の手や脚の健康なじん帯を切り取り移植して「再建」するトミー・ジョン(TJ)手術は球界の常識的治療法だ。しかし、この手術を3度もやり大リーグに復帰した投手となると球史初、レイズの救援左腕ジョニー・ベンタース(33)だ。05年ブレーブス1A時代に最初の手術、2度目が13年、15年の3度目の手術後、解雇されたがレイズに拾われた。3年間マイナー暮らし、今季4月25日オリオールズ戦で2027日ぶりに大リーグのマウンドに立った。「2度目のデビュー戦の喜びは再発の不安との闘いの始まりだ」。以後、ワンポイント的な救援を続けている。

 ネット上の「TJ手術リスト」には、大リーグ球団と傘下のマイナー球団の手術を受けた選手が長い表になって掲載されているが、今年だけで58人もの選手の名が加わった。1975年、肘痛に悩む左腕トミー・ジョン氏(当時ドジャース)が新治療法開発に熱心な整形外科医フランク・ジョーブ博士によってじん帯移植手術を受けてから43年、その数は1596人にもなる。ジョン氏の投手生活は26年、通算288勝、殿堂入りに近いハイレベルだ。手術前12年で124勝、手術後14年で164勝の奇跡の球歴。この大成功でTJ手術は肘の故障に悩む大リーガーとその予備軍の「球界指定療法」になった。

 手術後のカムバック状況のデータがないので、その成功率は分からない。ベンタースにしても、手術は2度失敗、1度成功とでも数えるのか…。かつてリハビリ期間は1年と言われた。今は1年半必要という。きちんとしたリハビリ・マニュアルがないのだ。実はジョン氏は術後3カ月で左手の指が動かなくなった。再度患部を切り開き、移動した神経を元に戻した。難しい手術なのだ。大谷翔平とTJ手術の話題がしきりだ。どうなることか、心配は増すばかり。(野次馬)

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