球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ヤンキース球団社長 元ボスに誕生日祝いのはずが…

[ 2018年6月3日 05:30 ]

 米国の5月の最終月曜日(28日)は国の祭日、戦没者追悼記念日だ。ヤンキースタジアムは昨季の王者アストロズを迎えて満員だった。大型ビジョンにはこの日74歳の誕生日を迎え観戦に来たルディ・ジュリアーニ元市長が映し出された。ものすごいブーイングが湧き上がった。

 ジュリアーニ氏は94年から01年まで2期8年間ニューヨーク市長を務め、腐敗した市警を立て直し、検挙率を上げ、マフィアをつぶし、危険な大都市を安全で華やかな“観光都市”に生まれ変わらせた功労者だ。特に01年9月11日の米中枢同時テロでぼう然自失の市民を励ましてテロに対処した危機管理能力は世界中から称賛された。かつてのドジャースの本拠地ブルックリン地区に生まれ、ド軍ファンに囲まれた「子供のころから戦ってきた筋金入りのヤンキースファン」。ヤ軍の帽子、ジャージー姿で崩れ落ちたワールド・トレードセンター周辺を走り回り消防、警察の陣頭指揮を執ったときがジュリアーニ人気の頂点だった。しかし、国政を目指し、ヒラリー・クリントン女史と上院議員の座を争って敗れ、市長の座を去ってからは逆風にさらされる。検挙率を上げるためマイノリティーを狙う強権的捜査を全米の警察に広めた張本人、というのだ。“乱世の英雄”のマイナス面だが、ニューヨークで不人気のトランプ大統領の顧問弁護士になったのもブーイングを大きくした。

 実は、ジュリアーニ氏の大型ビジョン登場は、ランディ・レバイン球団社長の気配りだった。レバイン社長はジュリアーニ市長時代の副市長、かつてのボスの誕生日祝いのつもりが逆効果になった。ホワイトハウスに戻ったジュリアーニ氏は記者たちに「ヤンキースファンは愛する者にブーイングを浴びせるのだ」と言った。今度はネット上に「おれたちはレッドソックスを愛しているとでもいうのか」と怒りの声があふれた。 (野次馬)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る