球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

防護ネット拡張でも不完全なファンの保護

[ 2018年4月1日 05:30 ]

 「今季から球場のファンは今までより安全に観戦できる」とニューヨーク・タイムズ紙が伝えた。全30球団がバックネットからベンチの外野側の端まで防護ネットを張り終えた。大リーグ機構(MLB)が「ファンの安全のために防護ネット拡張のお願い」を出して3年目。何ともスローな話だが、グラウンドに近い席のファンは「ネットは見にくい」と嫌がった。最も高額な席だから球団も手をつけにくい。印刷メディアはファウルボールや折れたバットでケガをしたファンを取り上げない。それがテレビ中継の観客が負傷する映像で次第に変化した。昨年、ヤンキースタジアムで2歳の女の子が打球で顔面を骨折した後、ある大学の調査では、ネット拡張賛成者は前年の54%から76%に増えていた。

 ただし、ファンの保護は完全ではない。入場券の裏に書かれた「観戦中にケガをした場合は、あなたご自身の責任となります」との文章が問題だ。「球団は責任を負わない」という免責条項。ケガの治療費も法廷に訴えた場合の裁判費用も全て被害者持ちの「球界規則」。

 ワールドシリーズが始まって10年目の1913年、この規則を全球団が採用した。以後、ケガをしたファンが裁判に持ち込んでも入場券=契約書で、まず勝てない。

 しかし、壁に挑戦するファンがいる。この男性、11年にファウルボールで左目を失明、ヤンキースとMLBを訴えた。昨年やっと出たニューヨーク州高裁の判決は、ヤ軍とMLBの裁判費用約8万円を原告の男性が払うこと。男性は治療費、裁判費用に数千万円を費やしたというから富裕層なのだろう。男性は支払いを拒否、近郊のオールバニ市の州控訴裁判所の最後の判決を待っている。

 「1世紀前に球界だけで決めた規則をファンに押し付けるのは不当」という男性に共感のファンは多いはずだ。(野次馬)

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