球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

幼女の顔面に打球が…ヤンキースは商売よりファンの命を守れ

[ 2017年9月24日 05:30 ]

 20日のヤンキースVSツインズのニュース映像。ヤ軍のトッド・フレージャーが打った時速165キロのライナーが、三塁ベンチ後ろで祖父と観戦していた幼い女の子の顔を直撃した。瞬間の映像はカットされていたが、フレージャーが涙をこらえ、両軍の選手、審判員、観客の引きつった顔が映し出された。ヤンキースは「回復を祈る」と声明を出した。

 「連邦法のプライバシー規定により、病院は重症とだけ発表した」。ヤ軍経営陣には衝撃だ。15年、大リーグ機構(MLB)は全球団に「観客席に飛び込む打球、折れたバットからファンを守る防護ネットを張るように」と通達した。長さはバックネットからベンチの端まで、高さは…とガイドラインも示した。各球団はこれに従い、今はガイドライン以上の防護策を講じる球団が増えている。

 ヤ軍は「ファンの安全第一」と言いながら腰が重い。最低限のネットで済ませ、ニューヨーク市政庁が「ネットの長さを延ばすように」と勧告しても「技術的面を研究中。ネットの材質、工事期間の問題もあり…」と逃げるばかり。昨年、同じニューヨークのメッツがMLBガイド以上の防護ネットを設置し、今季も球宴休みの4日間でさらにネット拡張工事を済ませたのと対照的だ。

 ヤ軍が防護ネットに消極的な理由は商売のため。ネットが守る観客席は前列の予約席、高額なシーズン・シートで長年の顧客がほとんど。このお得意ファンが「ネットで見づらくなる」と反対なのだ。しかし、事情は他球団も同じ。席を変更して対応する。ネットの材質も細くて強い新素材。「目の補正力ですぐ慣れる」と技術者たち。今季ヤ軍の試合で4人のファンが大ケガをした。「弁解よりネットだ」。メディアはヤ軍を急がせる。 (野次馬)

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