球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

脱廃虚なるか?アスレチックス新球場問題

[ 2017年9月17日 05:30 ]

 今季も現在ア・リーグ西地区最下位(3年連続)のアスレチックスが新球場建設を打ち上げた。オークランド市とアラメダ郡内の3カ所を建設候補地とし、建設資金の大半をア軍自前の資金で、という。昨年11月に就任したデーブ・カバル球団社長の構想だ。カバル氏は2年前に近郊サンノゼ市のプロサッカーチーム、アースクエイクスで専用サッカー場を建設、成功した。その手腕を見込まれ、引き抜かれた。

 現在のホーム球場コロシアムは、多目的巨大競技場が全盛の1960年代に造られた時代遅れの遺物。ア軍は68年から使い始め今季で49年。共用していたアースクエイクスはサンノゼ市に去り、フットボールのレイダースも2年後の19年にラスベガス移転が決まった。周囲の工場地帯の荒廃、治安の悪化。そして頻発する排水設備の老朽化が原因の悪臭漂う下水の逆流によるベンチやロッカーの浸水騒ぎ。このままでは、ア軍だけが巨大なコンクリートの廃虚に取り残される。

 実は数年前、サンノゼ市がア軍を招致し移転がほぼ決まったのだが、隣接のサンフランシスコを本拠地とするジャイアンツが「わが球団の保護地域」と猛反対。サンノゼ市は「独禁法違反」と法廷に持ち込んだものの、大リーグの持つ「独禁法適用除外特権」の前に敗れた。ジャイアンツは、IT企業が多いサンノゼ市の富裕層ファンを奪われるのを恐れたのだ。

 ア軍の新球場問題はセリグ前コミッショナー時代から20年も続く懸案事項だ。カバル球団社長の土地提供要請にも市、郡の政庁関係者は沈黙を決め込む。メディアは「大リーグ機構(MLB)が積極的に関われ」とせかすが、腰は重い。ア軍は悪臭漂う廃虚を抜け出せるだろうか。 (野次馬)

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