球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

米球界にものぞき見える“暗い差別の歴史の影”

[ 2017年8月27日 05:30 ]

 南部バージニア州で白人至上主義者のグループとそれに抗議する人々が衝突した。トランプ大統領は、白人至上主義グループを非難せず「双方が悪い」と言った。世論は分裂した。球界でも暗い歴史の影がのぞいた。

 レッドソックスのジョン・ヘンリー・オーナーが「ボストン市がフェンウェイ・パーク周辺の道路“ヨーキー・ウエー”を変更してくれることを望む。今こそ道路の名を変えるチャンスだ。私はレ軍を買収して以来15年間ずっとそのことを考えてきた」と地元紙に語ったのだ。

 トム・ヨーキー氏はレ軍を33年から44年間所有していたオーナーだ。ベーブ・ルースをヤンキースにトレードする大失敗で低迷したレ軍を買い取り立て直した大功労者。また、今も続く多くの慈善事業でボストン市に多大な貢献した人物でもある。ワールドシリーズ制覇を果たせぬまま亡くなったが、殿堂入りしている。球場周辺の道路にその名が付けられて“当然”なのだが、汚点があった。「黒人選手の採用に消極的だった」。レ軍が黒人選手を採用したのは56年、ジャッキー・ロビンソンのドジャース入りから12年も遅れた大リーグ最後の球団だ。実は、レ軍はロビンソンをテストしたし、大リーグ史上最高の黒人選手とされるウィリー・メイズとは契約寸前に。しかし、ヨーキー・オーナーは決断できなかった。

 ルース放出の“バンビーノ(ルースの愛称)の呪い”で王者になれなかった、とよく言われたが、ひそかに“白人だけのチームへの呪い”とも言われていた。道路名変更の権限は市議会にある。「新しい名は“デービッド・オルティス通り”あるいは“ビッグ・パピー通り”はどうか」。ヘンリー・オーナーは昨季引退した強打者の名を挙げているのだが…。(野次馬)

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