球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

トランプ米大統領誕生で思い出される「ベースボール・リーグ」構想と失敗

[ 2017年1月22日 05:30 ]

 世界中から「何が起こるか?」と注目を集めるドナルド・トランプ新大統領が動きだした。大統領就任前からツイッターで国内外の大企業や外国に圧力をかける放言をしてきた人物だ。球界にも警戒感があるらしい。思い出すのは、1989年、当時“不動産王”として人気抜群のトランプ氏が新リーグ構想に関わり、挫折した騒動だ。

 新リーグの名は「ベースボール・リーグ」。8チームで構成し、2リーグ制とし、シーズン154試合、米国とカナダの都市にチームの本拠を置く。計画は2年前から元大リーグ球団経営幹部たち、大リーグ選手協会の元顧問弁護士でFA制度誕生に大きな役割を果たしたディック・モス氏らの富裕層が進めていた。これにトランプ氏が加わった。「見込みのある計画だ。テレビ局との契約だけでも有望」とトランプ氏。グループのメンバーには「トランプはリーダーになりたがる。パートナーとしてやっていけるのか」と危ぶむ人もいた。トランプ氏は「チーム・プレーヤーになる。球場建設はホテル造りで実績のある私に任せろ」。

 ところがトランプ氏は「2チーム所有して、ニューヨークと私のカジノがあるアトランティックシティーとにチームを置きたい」と言いだした。これでは試合の公正さは保てない。さらに「トランプの狙いはこのリーグを“利用”し、大リーグ球団の買収」の見方も出てグループ内は揺れ、新リーグ計画はつぶれた。

 「新リーグには大リーグが猛圧力をかけて抑え込むのが球史の通例。失敗はトランプのせいとばかりは言えない」と、当時取材した野球記者OBのブログ。そして、「トランプは球団オーナーになれず大統領になった。これは我が国にとってプラスだろうか…」とブログを結んでいた。 (野次馬)

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