下柳剛のシモネタ発見

想像以上の効果あった 権藤さん直伝 苦しい時の「抜いた真っすぐ」

[ 2015年1月19日 05:30 ]

 スポニチアネックス読者のみなさん、いかがお過ごしですか? 1週間のごぶさたです。下柳です。

 さてさて、今週も「権藤さんシリーズ」で書かせてもらうことにしますか。少しおさらいさせてもらうと、権藤博さんはオレがダイエーに入団した時の投手コーチ。オレにとっては、根本睦夫さんと同じくプロ野球界の師匠やね。

 で、先週は権藤さんならではの「ホームベースの両サイドさえ外さなければ使ってやる」という話しを書いたけど、今週はもうワンランク上?の仰天アドバイスについて紹介させてもらうわ。

 「シモ、困ったら、遅い球をど真ん中へ投げろ!」

 読者のみなさん、どうですか? なかなかインパクトがあるフレーズでしょう(笑)。

 打者との対戦を重ねていく中で、どうやっても打ち取れない打席というのが何度か出てくる。どの球種を良いコースへ投げてもうまくファウルで逃げられたり、誘いの際どい変化球を見逃されたり。打者の雰囲気から察しても、真っすぐは狙われている…。「あ~、もうどうしようもない」。そうなった時の必殺技が権藤さん直伝の“抜いた真っすぐ”やった。

 ただ、これは例えばバッテリーに余裕がある時には使えない。権藤さんから「禁止!」を言い渡されていたからね。

 この抜いた真っすぐというのは、簡単そうに見えて実は難しい。プロの打者は投手の腕の振りで簡単に真っすぐか変化球かを見抜いてくるから、その“抜いた真っすぐ”を振ってもらおうと思ったら通常の真っすぐとほぼ同じ腕の振りをしないといけないわけや。

 当然、試合で使えるようにマスターできるまでは、時間がかかったよ。ブルペンでの投球練習も10~20球続けて真っすぐを投げていたら、権藤さんからダメ出しが入る。

 「シモ、5球投げたら1球は抜いた真っすぐを投げんか!」

 もちろん、投手というのはひたすら真っすぐを投げ込まないといけない時期があるんだけど、ある程度、それもプロで飯を食っていこうと思ったら、工夫をしなければいけない。その工夫の一つが“抜いた真っすぐ”やったわけやね。

 そんな発想、権藤さんに言われるまで、全くないよね。オレだけやない。プロのほとんどのピッチャーにも、そのアイディアは浮かんでこないやろう。「とにかく、オレは速い球を投げときゃ、プロの打者を抑えられる」。オレもスピードには自信があったから、なおさら権藤さんからのアドバイスは斬新やったよ。

 練習はしっかりと積んだけど、いざ試合で投げるとなれば、やっぱり勇気がいったよ。ましてや、こちらがマウンドで汲々としている時に、投げるボールなんやからね。

 結果は…。オレが想像していたより遙かに有効なボールやったよ。何度成功しても投げる前はすごく怖いんやけど、成功したら味を占めるというかね。随分と助けてもらった記憶がある。確かに、打者目線からすれば投手が苦しい場面でそんな“おいしいボール”が来るとは思わんやろうからね。プロの1軍の投手ともなれば“ど真ん中”なんてまず投げないから、打者もかえって力むんやろうね。しかも、腕の振りの割には遅いんやから(笑)。

 でも、いま改めて思うのは、権藤さんの器の大きさだよね。オレがたまにそのボールを打たれても、あの人は決して文句を言わないし、怒ることもなかった。それどころか「ナイスボール!」とか「シモ、それぐらい投げられたら、お前は大したもんだよ」と声をかけてくれた。みなさん、オレが心から信頼する気持ち、よく分かるでしょ?

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