下柳剛のシモネタ発見

初ブルペンのチェックポイント 重要なのは下半身

[ 2014年2月3日 05:30 ]

キャンプでブルペンに入る阪神時代の下柳(09年2月撮影)

 球春到来! いよいよ、プロ野球のキャンプが始まりましたな。下柳です。野球選手にとってのお正月と言われるのが、初日となる2月1日。今回はその特別な一日から書きましょう。

 何年やっても、いや、年を取れば取るほど、キャンプイン前日の夜、つまり1月31日は何とも言えない気持ちやったね。特に晩年は。

 「今年もオレは同じように投げられるんやろうか…」

 そんな不安が頭をもたげとったね。オフの自主トレ期間中は「今年もやるで」とポジティブなんやけど…。前日の夜、全体ミーティングでみんなと顔を合わせると、急に暗い気持ちになる。

 「あ~、ここから1カ月は缶詰生活か…」

 不安と憂鬱な気持ちのまま、眠りに就くのが常やった。で、2月1日の当日は朝から風呂へ入って、その後は入念にストレッチ。ユニホームに着替えて、最後にベルトをつける。それが、重くて、重くて…。自主トレで完ぺきに仕上げたとしても、まあ、その瞬間から体が重く感じたわ。

 今、振り返ると、やっぱり阪神在籍時は年を追うごとに、ファンの方々の期待も高まっていったと思う。「下柳は今年も10勝ぐらいしてくれるやろう」。その気持ちを裏切りたくはなかったからね。それが重たい気持ちにつながっていたんやろう。宿舎から宜野座球場へ向かうまでのバスでも憂鬱。グラウンドへ一歩足を踏み入れればなくなるんやけど、あれは不思議な感覚やったね。

 阪神時代、自主トレ期間中はブルペンに入らんかったから、キャンプがその年の初ブルペンになっとった。そこで確認すべきは球筋よりも、むしろ体の使い方。自分の中で、いくつかチェックポイントを持っとったよ。

 まず、(1)セットポジションから動作に入るんやけど、軸足(左足)で体の重みを感じて立っているかどうか。次に(2)左膝に体重が乗っている間に左腕をトップ近くに持って行く。(3)右足が地面に着地した時には、トップをつくっていること。そこから(4)体重移動させながら、顔の前でボールをリリースする。(5)踏み出した右足には体重をきっちりと乗せておかなければ、いけない。

 ざっと書いてみたけど、正直、腕の使い方は全くと言ってよいほど気にしとらんかった。重要なのは下半身。下半身をちゃんと動かせることができれば、腕は勝手に動いてくれる。トップをきちんとつくることを忘れてはならないけれど、下半身を正しく使えれば球は自然と行く。だって、でんでん太鼓は軸さえしっかり動かせば、良い音が鳴るでしょう。そのために下半身、体幹を鍛えていたし、その一方で、右肩の開きとか、上体が突っ込むとかは、考えたこともなかったね。

 上体が突っ込まなかったのは、投げる際にいったん、目線を切ってたからやろうね。捕手をのぞき込んでしまうと、どうしても無意識で体が前へ行きたがる。それより、軸足にしっかり体重を乗せる意識を持つためにも、目線は切るよう心がけとった。

 あと、先輩から“これぞ、プロフェッショナル!”という指摘を受けたことがあってね。若いころ、ブルペンキャッチャーから、こんな風に言われた。

 「おい、シモ、サインが真っすぐの時は、目つきが違うぞ!」

 当時は豪速球が売りやったからね。真っすぐのサインが出ると、自然と目力が強くなっとったんやろう。そんな些細な変化を見逃してくれないのがプロの世界。それからは目線にも、気を付けるようになった。

 目線で思い出すのは、清原さんやね。オレの阪神時代、巨人戦の時やった。ベテランと呼ばれるようになってからは、バッターの仕草を観察することにも神経を使っとった。さっきのオレじゃないけど、仕草のどこかに変化が出るかもしれないからね。

 で、あるとき、マウンドとホームベースのちょうど真ん中辺りに、清原さんの目線が向けられてることに気がついた。「何や?」と思ってその辺を見てみると、小さなゴミが落ちとってね。オレはタイムをかけて、そのゴミを拾いに行った。その様子を清原さんも、もちろん見とった。後日談やけど、清原さんはこう思ったらしい。「目線まで見られたら、今日はシモを打てないわ」と。

 清原さんと言えば、こんなこともあったな。まだ、ダイエーにおったころや。西武戦のミーティングでは、コーチから「清原に投げるカーブは低め!」と徹底されとった。若かりし頃のオレは「清原さんにはカーブは低め! カーブは低め!」と、うわごとのようにつぶやいとった。

 それはマウンドでも、当然、変わらない。コーチに言われ通り、オレは低めだけを意識してカーブを投げたよ。そしたら…。これまたちょうど、マウンドとホームベースのちょうど真ん中辺りでバウンドしてしもた。それを見た清原さんは、ポカーンと口を開けとったな。え? その日の結果? そりゃあ、オレが抑えさせてもらったよ。だって、オレがバッターやったら、どこへ投げてくるか分からんようなピッチャー、嫌やもんな!

 話が脱線してもうたけど、キャンプ休みでは新しい外国人選手と食事に出かけるのが慣例やった。オレ自身、トレードも経験しているし、ダイエー、日本ハム、阪神、楽天の4球団でプレーさせてもらった。どれだけベテランになっても移籍先では「どんな雰囲気、チームなんやろう?」と気になるもの。特に、日本へ初めてやってきた外国人選手はその思いが強いやろうから、積極的に誘うようにしとったよ。異国の地で、少しでもリラックスしてほしいしな。

 阪神時代で思い出すのは、高見知佳さんの旦那さんが経営しているメキシコ料理屋やね。「オブリガード」というお店やけど、ここのタコスがまた美味しくてね。スペンサーなんか、バクバク食っとったよ。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る