下柳剛のシモネタ発見

自主トレの自衛隊基地で遭遇した“恐怖体験”

[ 2014年1月20日 05:30 ]

98年、那覇の自衛隊基地で自主トレをする田畑一也投手・下柳剛投手・足利豊投手(左から)

 1週間ぶりに更新します。下柳です。折しも1月ということで、今回から数回にわたって「自主トレ」のことを書かせてもらいますわ。

 それはもう、ありとあらゆるジャンルのものを取り入れとったんやけど、まずは自衛隊のお話にしましょうか。

 一番のきっかけは兄・洋が自衛隊に所属しとることやわね。ダイエーに入団して1、2年目の頃やった。兄貴は当時、沖縄の那覇でヘリコプターの整備を担当しとった。温暖な場所を探していたこともあって「那覇の基地でトレーニングしたい」と兄貴にお願いしてね。そしたら、とんとん拍子で話が進んで、那覇にある陸上自衛隊の全施設を使わせてもらえることになった。

 那覇基地は、那覇空港のすぐ近くにあってね。。基地の総面積は約212万平方メートル! 俗に言う東京ドーム45個分の広大な敷地で、そのフェンス沿いを延々ランニングしとった。ある時は山の中へ入ってクロスカントリーもしたし、雨が降ったら体育館も使わせてもらった。

 それこそもう、敷地内には何でも揃っているわけよ。床屋もあるし、売店もある。お酒を飲める場所もあったしね。

 当然、自衛隊員とも仲良くなって、飲み会をすることもあった。20年以上も前のことやけど、今でも交流は続いていて、特に阪神へ移籍してからは宜野座キャンプ中に入れ替わり立ち替わり激励に来てもらった。すごく感謝しているよね。

 宿泊ももちろん、敷地内にあるロッジ。ほぼ1カ月間そこで過ごしたわけやけど、ある夜、こんなことがあった。

 なぜか分からんけど、その晩は寝る前にふと考えてね。戦時中、沖縄は激戦地。「このあたりに住んでおられた方も、たくさん亡くなられたのかな」と思いながら、眠りについた。

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 最初は遠くの方から、そんな声が聞こえてきて目が覚めた。寝ぼけとるから何のことか分からんのやけど、段々と正気に戻ってくると、どうもオッサンが笑っている。

 「ん?」

 不思議に思って今度はよ~く耳を澄ませてみると、その笑い声はオレの部屋から聞こえとるやんか!!!

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 いや、絶対に、オッサンがオレの部屋で笑っとることなんかありえへん! 気のせい、気のせい、気のせい! 絶対、気のせ~い!! 練習しすぎて、オレ疲れとるわ! 気を取り直して、無理矢理寝てやった。でも…。

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 アカン…。どれだけ自分をダマそうとしても、もうダマされへん。オッサン、やっぱりオレの部屋で笑っとる。しかも、爆笑! 怖すぎて、電気もよう点けん。生まれてこのかた、霊体験なんて一度もなかったのに…。

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 暗がりの中、おそるおそる目を開けてみた。う~ん、暗すぎて、何も見えん。ただ、オレの目の前には、おらん。それだけは何となく、分かった。

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 どんだけ、可笑しいねん! もう、ええわ! 部屋中の電気つけて、この目で見届けたる!

 「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

 やっぱり、予想通り、目の前にはおらん。そしたら、背後しかないやないか。おら~…。

 「ヤッ、ヤッ、ヤッ、ヤッ、ヤッ…、ヤモリやないか~」

 全身から力が抜けるとは、あのことやな。どれだけ、安心したことか。オッサンでも、何でもない。そう、正解はヤモリやった。それも笑っとるんやない。鳴いとっただけや。10センチぐらいの大きさやった。

 安心した半面、めちゃくちゃ恥ずかしかったわな。大の大人がやで、ヤモリにビビって寝られんかったんやから。

 もちろん、そのまま、一晩中、鳴いてもらったよ。「家を守る」と書いてヤモリでしょ。退治なんて、滅相もない。はい、しっかり一晩をともにしましたよ。でも、あれは、ほんまに怖かった。

 ヤモリはさておき、基地では貴重な体験もさせてもらえた。あるとき、市民を対象にした「ブラックホーク」の搭乗体験会が開催されてね。自衛隊のご厚意で、オレも載せてもらうことになった。

 映画になったこともある「ブラックホーク」やけど、沖縄県では緊急輸送時に活躍しとったみたいやね。南国やから、時にはハブに噛まれたりする人もいる。

 場所によっては病院もないところもあるから、そんな時に出動するわけ。交通事故が起こった時なんかもそう。

 機内の施設はそれはもう、すごくて、当時では目にすることのないナビも搭載されとったし、バードビューのモニターもそれは鮮やかやった。

 その他の自主トレについては次週に書かせていただくけれど、やっぱり興味を持って、いろんなことをやるのが一番大事じゃないんかな。

 それと、最後に、これだけはもう一つ。自衛隊での自主トレで一番タメになったのは、何より過酷な訓練を積んでいる隊員たちの姿やった。

 オレがランニングをしているその横で、みんな歯を食いしばって1日1日を過ごしている。それに比べれば、オレのトレーニングはまだ楽。しかも、変な話、給料はオレの方が良い…。

 改めて、姿勢を正したというか、やっぱり気持ちが引き締まったよね。

 「オレも、今以上に野球に対して真摯に向き合わなアカン」

 そう気付かせてもらえたことが、本当にありがたかった。

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