桜井克也の球界“人”筆書き

楽天・栗原コーチ 妥協許さぬ情熱指導で、選手とともに成長の途に

西武・嶋コーチ(右)と談笑する楽天・栗原コーチ
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 クライマックスシリーズ(CS)圏内争いが激しさを増してきました。パ・リーグは3位の座を巡り、ソフトバンク、オリックス、ロッテが接近戦を繰り広げていますが、最下位の楽天にもまだチャンスが残されている現状です。その楽天ですが、3、4月を6勝19敗1分と大きく出遅れ、借金が20に到達した6月16日には梨田昌孝監督が辞任。一時は5位からも大きく離されましたが、ここに来てジワリと差を詰めてきました。打線が勢いを取り戻すに至った要因として、栗原健太打撃コーチの功績も小さくないでしょう。

 4月30日に高須洋介コーチと入れ替わる形で1軍に昇格。打撃陣の立て直しが命題でした。とはいえシーズン途中の昇格では、できることは限られています。打つために、得点力を上げるために、技術的な指導を行うのではなく、まずは考えることから始めました。

 「数字を見たら、なぜか本拠地で打てていなかったんですよ。ビジターではそんなに悪くないのに。本拠地で打てないということは普通ならあり得ない。何か、理由があるはずでしょう」

 違和感の正体を徹底的に突き詰めて行った結果、行き着いたのは「試合前のフリー打撃」でした。

 フリー打撃では通常、打撃投手はマウンドより数メートル前から投球します。全面天然芝の楽天生命パーク宮城の場合、芝生保護の観点から台を置き、その上から投球します。その「台」が少しだけ問題でした。

 「打者目線で見ると、長身の選手が投げ下ろしてくるような感覚になるんですね。試合前は、いろいろなことを確認しながら打ちたいのに、知らないうちに少し差される感覚になるんですよ。その感覚のままで試合に行くと、タイミングとか間に影響が出てしまうことになるんです」

 そこで台を、それまでの位置から少しだけ下げ、本塁から16メートルの距離に固定。より試合での距離感、スピード感に近づけることで違和感の解消を目指しました。3、4月の月間チーム打率は・216でしたが、5月は・246で6月・263、7月・264。もちろんフリー打撃だけが要因だけではないでしょうが、打線の状態は確実に上向いてきました。

 数字にすれば、ほんの数10センチのこと。ただ、そこには妥協を許さない信念が凝縮されています。背景には広島時代に教えを受けた内田順三コーチ(現巨人2軍打撃コーチ)の教えがあると言います。

 「“打撃は、ほんの少しのことですぐに崩れる”が口癖でした。だから一つのティーを上げるにも、絶対に妥協しない。1球1球に愛情や情熱というか、打たせるんだという執念みたいなモノも感じるティーでした」

 自分が教わってきたように些細な妥協すらも許さない姿勢で指導にあたっています。

 栗原コーチは1999年ドラフト3位で広島に入団。入団5年目の2004年に自身初の2桁本塁打(11本塁打)をマークしてレギュラー獲りの土台を築くと、07年からは2年連続でシーズン全試合出場。長く赤ヘル打線の主軸として活躍し、16年に楽天で引退するまで1082本の安打を積み重ねました。豊富な練習量で知られた選手だけに、教え子達にも練習を…と思いがちですが、そこは違うようです。

 「ただ練習するだけでは、打てません。打てるようになるには、やはり技術が必要なんです。では技術を身につけるにはどうしたらいいか?それは自分で問題意識を持って、練習の中で反復していくしかないんですね」

 若手に膨大な練習量を課すことはしません。まずは技術を教え、練習でやらせてみる。小さな成功体験を積み重ねることによって、選手に自発的に練習量の重要性を認識してもらうことを心がけています。

 裏表のない人間性。常に穏やかで物腰の柔らかい根っからの野球少年は楽しそうに笑います。

 「学校の先生みたいですよ」

 若手の多いチームだけに、本当の意味での効果が出るのは来年以降でしょう。若手同様、指導者としての経験、実績を着実に積んでいる栗原コーチの“成長”にも注目したいです。

[ 2018年8月16日 15:33 ]

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