日めくりプロ野球 7月

【7月25日】1994年(平6) 改名記念「カズ山本」大暴れ猛打賞!

[ 2010年7月1日 06:00 ]

 【ダイエー9―6近鉄】打順はいつもどおり2番、指名打者での出場も普段と変わらなかった。大きく変わったのは藤井寺球場のスコアボードに刻まれた名前だった。 ダイエー・山本和範外野手は球宴明けの近鉄17回戦から登録名を「カズ山本」に変更。この日がお披露目となった。「昔は“山本和”って書かれていたから、あまり変わりはないよ」と話したが、心機一転でバットは大暴れした。

 初回、先発の山崎慎太郎投手からチーム初安打となる右前打を放つと、4回にも中前打。8回の5打席目も中前打を打ち、勝負を決定付ける2点の追加点のお膳立て。6打数3安打の猛打賞で打率は3割5分9厘に上昇。パ・リーグのバットマンレースでオリックス・イチローに次ぐ堂々の2位をキープした。
 「カズ」コールに乗せて打席に入った気分は「今までドラちゃんと呼ばれていたから、ちょっとヘンな感じやったけど、本名やもんね。これでええよ」。主軸の秋山幸二外野手が発熱、松永浩美内野手もケガで戦列を離れる中、南海以来のホークス戦士がチームの顔として意地をみせ、対近鉄戦の連敗を3で止めた。
 「ドラじゃ、学校で子どもがいじめられる」。山本の切実な訴えが登録名変更の最大の理由だった。その顔つきからドラキュラを略したドラという愛称で呼ばれていたが、子どもたちの間では悪気はなくとも、からかったりするもの。山本は5月中旬に“改名”を球団に申し出た。
 球団も申し出自体は了承したが「でも今度はうてなくなると“カズ”じゃなくて“カス”と呼ばれるかもしれない」と指摘。黙りこくってしまった山本は、しばらく時間がほしいとし、変更までに約2カ月の時間がかかってしまった。
 “カス”と呼ばれるわけにはいかない。38歳のベテランは前半戦の4割ペースはさすがにキープできなかったものの、3割1分7厘で打撃成績2位、自身のキャリアの中で自己ベストのアベレージを記録。年俸も2億円の大台に乗り、リストラ男は執念でスター選手に登りつめた。
 しかし、「カズ山本」の登録名はわすが1年3カ月で終わった。翌95年、2億円プレーヤーになったが開幕早々右肩を亜脱臼して1軍ベンチから消えると、近鉄からホークスに移って13年目で最低の46試合出場にとどまり、打率も2割1厘、0本塁打で事実上戦力外通告され、自由契約に。今度はかつて戦力外通告をされた近鉄から声がかかり、古巣に復帰。その時に、背番号も「29」から「92」にし、登録名も山本和範に戻した。
 「2億円もカズ山本も福岡に置いてきた。近鉄は古巣というよりルーキーの気持ちで頑張る。会社がいらないと言うまでやりたい」と決意表明し、さらに4年間バファローズで選手生活を続けた。2度の戦力外通告にもかかわらず現役を23年続け、安打数は通算1400本、175本塁打、2割8分3厘の数字を残した男はほかに例を見ない。
 

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