日めくりプロ野球 7月

【7月24日】1991年(平3) 延長12回 野茂英雄、工藤公康、槙原寛巳 ハプニング続出

[ 2010年7月1日 06:00 ]

 【全セ3―3全パ】予期せぬアクシデントだった。広島市民球場でのオールスター第3戦、延長12回表2死一塁で打席の西武・秋山幸二中堅手の顔面に自打球が当たった。そのままグラウンドに倒れ込み、動くことができない秋山。右目の上を切り大量に出血。担架で運び出され、救急車が呼ばれた。
 秋山に代わってカウント2―2から誰か打席に立たせなければならない。ところが、この時点で全パは捕手を含め野手は全員使ってしまっていて、残っているのは投手ばかり。全パの西武・森祇晶監督は既に試合に出場したダイエー・佐々木誠外野手に準備をさせれば、全セの巨人・藤田元司監督は「次の打者の中島(聡捕手、オリックス)に打たせればいい」と審判団に持ちかけた。

 公式戦ならありえない話ばかりで、球宴だから許されるユニークな提案だが、結局は野手がいなくなった場合の特例ルールはなく、投手が打席に立つしか選択肢がなかった。
 「野茂っ、お前行ってこい!」森監督が半ば強制的に指名して、近鉄の野茂英雄投手が“代打”で起用されることになった。苦笑しながらバットを担ぎ、なぜかオリックスのヘルメットをかぶって打席へ。ベンチの近鉄・仰木彬監督が「振るなよ、振るなよ」とさかんに声を出していた。
 秋山が負傷退場したように、バットを出したらどんなハプニングがあるか分からない。それを心配した仰木監督だが、野茂はホームベースから離れて立ち、巨人・槙原寛巳投手のストレートを見送り“1球三振”。「槙原さんの球、速かった?分かりません。だって見ていませんから」と話した野茂は笑うしかなかった。
 一難去ってまた一難。今度は12回裏の守備だ。秋山が守っていたセンターにロッテの愛甲猛左翼手を回し、レフトには西武・工藤公康投手が入った。「高校の時に試合で投げないときに守って以来」という背番号47。観客の笑い声と拍手の中で定位置に就いた。
 2死二塁から巨人・駒田徳広一塁手の打球が左中間に舞い上がった。悲鳴にも似た観衆のざわめきが球場中に広がる中、足元も構えもおぼつかない工藤が落下点に入ったところを、愛甲がひったくるようにキャッチ。ハラハラドキドキの結末で、規定により延長12回で引き分けとなった。
 実は12回のドタバタは全セからだったことをこの時点で多くの関係者も観客も既に忘れていた。7人目の投手として登板した槙原だが、上に着ているのは「GIANTS」のロゴと背番号17はプリントされているもののTシャツだった。登板予定はなく、下しかユニホームを用意していなかったのだ。
 「6人で足りると思ったが、まさか12回まで来るなんて…。他球団の投手を予定外で投げさせるわけにはいかないでしょ」と藤田監督。大爆笑の中でマウンドに立った槙原は恥ずかしそうにしていたが、まさか秋山の負傷から、パ・リーグのベンチが大騒ぎになるとは誰も思ってもみなかった。

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