日めくりプロ野球 7月

【7月19日】1981年(昭56) 2人は見ていた…ガードナー、ホームベース踏んでいない

[ 2010年7月1日 06:00 ]

 【広島6―4大洋】快音を残して横浜スタジアムの右翼席中段に突き刺さった広島アート・ガードナー左翼手の16号逆転3ラン本塁打。6連敗中の大洋の必死の継投をあざ笑うかのように、4回に一挙4点を入れて逆転した。
 ダイヤモンドを一周してきたガードナーは満足そうな笑みを浮かべ、次打者の道原裕幸捕手にタッチ。三塁側ベンチも総出で助っ人外野手を迎えた。

 盛り上がる広島ベンチをよそに、大洋・辻恭彦捕手が池田弘投手に鈴木徹球審から受け取った新しいボールを投げるように声をかけた。辻が捕球するとそのままホームベースを踏み、鈴木球審に何事か耳打ちすると、球審は大きくうなずき、右腕を上げてコールした。「バッターアウト!」。
 ホームランなのにバッターアウト?事の次第をのみこめないガードナーと古葉竹識監督はすっ飛んできた。鈴木球審が説明する。「ガードナーはホームベースを踏んでいない。辻捕手がそれを見ていたし、私も踏んでいないのを確認した。大洋側からアピールがあり本塁打は取り消しになった」。
 もちろんガードナーは踏んだと力説するが、辻も鈴木球審も「道原とタッチする瞬間にホームベースを踏まずにまたいでいた」と全く同じ証言。そんなことがあるのか…と古葉監督もあ然とするばかりだが、2人ともはっきり見ていたというのでは抵抗しづらい。判定は“2点三塁打”となり、前に生還した2人の得点は認められると確認した上で、渋々引き下がった。
 走者追い越しなどで本塁打が取り消しになった例は過去10例以上あるが、ホームベースを踏まずに“幻の一撃”になったのはプロ野球史上初の珍事。ただ、2点だけでもこの一打が逆転打になったことがガードナーにとっても広島にとっても“不幸中の幸い”だった。
 「自分でも信じられなかったが、そのことは忘れて次も打ってチームに貢献しようと思った」とガードナー。結局、この試合で3安打猛打賞、“右越え2点三塁打”が勝利打点となり、負ければチームの4位転落という危機を救った。
 獲得を狙っていた外国人選手にフラれ、3月上旬になって急きょ獲得したガードナーは、ヒューストン・アストロズなどでメジャー経験はあるものの、ほとんどがマイナー暮らし。広島の重松良典球団代表が3月に入っても外国人選手が決まっていないことに焦り、前年3Aで3割1分6厘、74打点という数字だけを見て、獲得を打診したという。
 開幕2戦目の阪神2回戦で2本塁打を放ち、ホームラン賞の賞品を山ほどもらうと、貧しい農家の出身でトウモロコシばかり食べていたというガードナーは感激。「日本は豊かな国だな。頑張ればこんなにプレゼントがもらえる。俺のバッティングで悪いところがあったら、遠慮せずにいってくれ必ず修正する、とコーチには伝えた」とその日暮らしのマイナーリーグには戻りたくないと、日本で長くプレーすることを熱望した。
 1年目は2割8分1厘、26本塁打、77打点と大活躍も研究された2年目は2割5分4厘、4本塁打、28打点と急降下。希望した日本での球歴は2年で終わってしまった。

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