日めくりプロ野球 7月

【7月17日】2008年(平20) ヤクルト スクイズ失敗 一転してリーグ新記録へ

[ 2010年7月1日 06:00 ]

【ヤクルト3―0阪神】しまった!と打者が思う暇もなく、三塁走者がホームへ突進してきた。タッチをかいくぐってランナーの右手がホームベースに触れた。有隅昭二球審の両腕が横に大きく広げられ、待望の1点。気がつけば、一塁走者も二塁走者もそれぞれ二塁、三塁に進んでいた。
 両軍無得点のまま9回を迎えた甲子園での阪神―ヤクルト14回戦。ヤクルトは1死満塁の好機をつかみ打者は5番田中浩康二塁手。ベンチから出たサインはスクイズだった。阪神のマウンドは2番手の久保田智之投手。無安打3四球でつかんだチャンスだったが、その分制球は乱れており、大きく外れるボール球がくる可能性は大。不安を抱えながら田中はバットを水平に出した。

 案の定、ボールはワンバウンドし田中は空振り。矢野輝弘捕手も前にこぼして止めたが、それを拾いにいっているほんのわずかな間に、三走の福地寿樹右翼手がホームに滑り込んだ。スクイズ失敗が逆に待望の先制点を呼び込んだ形となった。
 スクイズの構えと同時に、二走青木宣親中堅手、一走畠山和洋一塁手もスタート。記録は久保田のワイルドピッチにはならず、福地はホームスチール、青木、畠山も盗塁に。けがの功名が生んだ三重盗となった。
 21世紀初、プロ野球18年ぶりのトリプルスチール。ヤクルトにとってもアトムズ時代の70年7月30日、同じ甲子園での阪神戦で武上四郎内野手、福富邦夫外野手、久代義明捕手の3人が決めて以来、38年ぶりの記録となった。
 ヤクルトの“足攻”はこれだけではなかった。三重盗の前、打者畠山の時に福地、青木がダブルスチールに成功。さらに三重盗の後、安打で出塁のウイルソン遊撃手が二盗を決めた。これで1イニング計6盗塁。過去3度、同様の記録がプロ野球にはあるが、セ・リーグではリーグ結成59年目にして初めての快挙だった。
 「単独でホームスチールなんてとんでもない。ただ、久保田のボールの角度から、はじいたらいけるかなと…。ホームスチール?初めてだよ」。この年、初の盗塁王に輝いた福地にしても初体験はなかなかスリリングだった様子。サインを出した高田繁監督は自慢の揺さぶっての攻撃がハマったことにご満悦。「阪神のリリーフ陣はなかなか打てないからね。足を絡めた攻撃が上手くいった」と笑顔が絶えなかった。
 1リーグ時代や2リーグ分裂直後は、野球技術もそれほど高くなく、モーションの大きい投手の時などを狙って、単独で本盗も仕掛けたりもしたが、70年代ごろからはスクイズ失敗の結果、というケースが多い。ホームスチールは1000試合に1試合くらいの確率といわれるが、1イニング6盗塁もなかなか見られるものではない。
 

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