日めくりプロ野球 7月

【7月14日】2009年(平21) ノムさん“失言”取り消します 宮出隆自、移籍1号弾

[ 2010年7月1日 06:00 ]

 【楽天8―6西武】打球が右翼へ高々と上がると、打った背番号9は祈りながら走り出した。「届け、届いてくれ!」。
 風の影響を受けない西武ドーム。打ち上げた瞬間は届くとは思わなかった。が、西武・佐藤友亮右翼手がフェンス際まで来ても打球は落ちてこない。佐藤がグラブを差し出すこともなく、打球は右翼席前方に落下した。

 「入っちゃったよ…ビックリした!」。祈ってはいたが、それはスタンドに届きそうもないから。いざ、本当に着弾すると嬉しさがこみ上げてきた。
 楽天の代打・宮出隆自外野手が9回、2死二塁で放った決勝の2点本塁打はシーズン1号弾。3月末にヤクルトから一場靖弘投手とのトレードで仙台にやって来た13年目のベテランは、4点差をひっくり返す、仕上げの仕事をひと振りで成し遂げた。
 ベンチの野村克也監督は代打策的中にことのほか上機嫌だった。この2点を福盛和男投手が守りきって白星をもぎ取ると、「ハーイ宮出ちゃ~ん!」とヒーローとハイタッチを交わした。「ええ振りやったなあ。シュートを強引に引っ張らず右に持っていった。すごい選手やで」と褒めちぎったノムさん。しかし、試合前はとんでもない“暴言”を吐いていた。
 あいさつに訪れたかつての愛弟子、西武・石井一久投手が「宮出をよろしくお願いします」とヤクルト時代の後輩をノムさんに売り込むと「宮出?うどの大木ゆうてな、何の役にも立たんわ」と辛口な言葉を返した。
 右の長打が打てる打者を、という補強ポイントを埋めたいと思っていたところ、ヤクルト側から一場の譲渡を申し込まれて成立したトレード。自身がスワローズの監督時代に投手として獲得した選手。野村監督の期待も大きかったが、新天地での活躍を誓い気負いすぎて結果が出なかった。
 7月に入り、再度1軍登録。内心これがラストチャンスと、宮出は思っていた。「打てたことより、チャンスをもらえたことが嬉しかった。やっと自分の力が出せて、チームに貢献できた」。初球、狙い球として指示されていた西武・三井浩二投手のフォークボールを見送ってしまい、次こそと迷わず振り抜いた結果だった。
 ヤクルト時代の07年9月5日、広島戦(神宮)以来、2年ぶりの本塁打は、3位西武を追う4位楽天が6ゲーム差に広げられるか、4ゲーム差に縮めるかの大切な一戦で値千金弾となった。
 「うどの大木?それは取り消すわ。失言の多い監督ですみませんね。オレのジョークはキツいから」とノムさん。3位以内に入ればクライマックスシリーズの出場権が得られる。そのギリギリのラインが5ゲーム差。なんとか踏ん張った楽天は、最終的に2位に滑り込んだ。逆に前年日本一の西武は手痛い逆転負け。4位に終わった。この一戦だけをとっても、春先のトレードは楽天にとって大成功だった。

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