日めくりプロ野球 7月

【7月3日】1994年(平6) ビンタ2発!池山隆寛、6本目にして初の逆転サヨナラ弾

[ 2010年7月1日 06:00 ]

 【ヤクルト4―3巨人】日曜日の星空に舞い上がった白球は、巨人・松井秀喜右翼手の頭上を軽々と越えた。4万8000人の歓喜と悲鳴が交錯した神宮球場。ヤクルト・池山隆寛遊撃手の12号2ラン本塁打は、逆転サヨナラの一撃となってスタンドに着弾した。

 本塁には笑顔、笑顔のヤクルトナインが…。池山が恐る恐るホームベースを踏むや否や、一斉に飛びかかってきた。頭を叩かれ、蹴りまで入り、なぎ倒された背番号1がようやく立ち上がると、ユニフォームのズボンが半分ずり落ちていた。「こんなことをするのはヒロさん(広沢克巳内野手)しかいませんよぉ」と言いながら、怒るどころか、むしろそれを楽しんでいるかのようだった。
 サヨナラの一撃は通算6本目。現役では落合博満内野手らの5本を上回る最多になったが、逆転の冠が付くのは初めて。「アカン、震えが止まらんわ」。ヒーローインタビューが終わっても興奮冷めやらぬ池山は、それを落ち着かせるためにあえてライトスタンドのスワローズファンに向かって全力疾走し「バンザーイ!バンザーイ!」を連呼。感激を分かち合った。
 「集中せい!集中や、集中」。つぶやくというより、自分にハッパをかけるように気合を入れた池山。打席に入る前、自ら右のほおにビンタを2発はると、同時に腹も決まった。「最初のひと振りや。これで仕留める」。追い込まれれば打てない。池山は直感的にそう感じていた。
 1点ビハインドで2死一塁。マウンドには巨人の守護神、石毛博史投手。昨年の対戦成績は14打数1安打と完璧にやられていた。5月21日、東京ドームでの8回戦で3点本塁打を放っていたが、イメージはやられっ放し。だからこそ、ファーストスイングで決めたかった。
 ベンチも予感していた。ここまで4打数無安打も右方向へいい感じの打球が2本飛んでいた。「2割8分のバッターや。そろそろと思っていた」と野村克也監督。さらに一塁走者に代走・柳田昌利内野手を使ってお膳立てをした。「僕が代走で出ると、今年は不思議とサヨナラ勝ちするんですよ」と背番号4。「何かを起こすためには、そういうジンクスもかつがんと」。ノムさんもそのへんは心得ていた。
 簡単に2つのアウトを取った石毛が四球を出し、池山への2球目に真ん中に入るスライダーを投げたのも、ヤクルトベンチの仕掛けに何か吸い寄せられるような感じだった。「勝てる試合を…僕の責任です」とだけ言って球場を後にした守護神はうなだれるしかなかった。
 この時点で3位のヤクルトは首位巨人と8・5ゲーム差。リーグ3連覇には赤信号が点滅し始めていたが、前年日本一のチームが復帰後初優勝を目指す長嶋ジャイアンツにひと泡吹かせた、梅雨時の一戦だった。

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