日めくりプロ野球 7月

【7月7日】2006年(平18) 「11番」ダルビッシュで11連勝のはずが、「29番」で11連勝

[ 2009年7月1日 06:00 ]

「YAGI 29」で勝ち投手になったダルビッシュ
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 【日本ハム7-1西武】 野球選手にとって最も恥ずかしい忘れ物だった。七夕の夜、西武9回戦(インボイス西武ドーム)先発した、日本ハム・ダルビッシュ有投手はちびっ子ファンには指をさされ、大人からは笑われた。その背中には「YAGI 29」の文字と数字。いつもの11番のユニフォームははるかかなたの札幌に置いてきてしまった。
 球場のロッカールム。バッグを開けてから青ざめた。いつもの11番がどこを探しても出てこない。ウソだろ、どうして?焦る気持ちを抑えて冷静に思い返してみると…。

 札幌ドームのロッカーにつるしたままのユニフォームのシルエットが頭の中に思い浮かんだ。「しわになっていたからハンガーにかけておいたんですよ」とダルビッシュ。バッグに入れたかどうか半信半疑だったが、荷物はすでに別便で球団が西武ドームに運んだ後。モヤモヤしながら球場入りしたが、やはり悪い予感は的中してしまった。子供の頃から「財布とかよくなくした」し、宮城・東北高時代も「甲子園でスパイクを忘れた」…。三つ子の魂なんとやらで、プロになっても“やっちまった”。
 急きょ、借りることになったのは翌8日先発予定の八木智哉投手の29番。非常時とはいえ、身長が八木より14センチ高いダルビッシュにとってピチピチのキツキツ。当初は体格が似たブルペン捕手用のものが用意されたが、3ケタの背番号には少々抵抗があった。だから、ぜい沢は言えない。キツかろが、カッコ悪かろうが、これで投げるしかなかった。
 「これで負けたら最悪。恥の上塗りや」。顔には終始そう書いてあった。6回1死一、三塁。打者はアレックス・カブレラ一塁手。1点しかリードはない。一発出れば逆転される場面で、ダルビッシュは腹を決めた。カウント1-1からの3球目、鶴岡慎也捕手のサインに首を振り、選んだの内角のツーシーム。間違えばスタンドへ持っていかれる危険を承知の上での勝負球だった。
 カブレラのバットが反応した。注文どおりの三塁へのゴロに仕留めると、5-4-3とわたって併殺打。「ヨッシャー!」。雄叫びをあげたダルビッシュはマウンドでガッツポーズ。7回まで投げ、シーズン5勝目。チームは61年(昭36)の東映フライヤーズ時代にマークした11連勝の球団タイ記録。なんとか恥は1回かいただけで済んだ。
 「29番で連敗したら罰金な」。日本ハム・佐藤義則投手コーチは“2人の29番”に半ば本気で言った。首位西武とは1・5ゲーム差。連敗すれば差は広がり、逆に連勝すれば逆に首位に立つ。1勝1敗でも現状維持。オールスター前のこの時期、ピタリと付いて優勝戦線に残るには、冗談ではなく連敗は許されなかった。
 11番で11連勝、とはいかなかったが、代役の29番でまず勝った。「11連勝?球団の歴史の一部に加われて嬉しい。それに負けなくて良かった。負けたら最低ですよ」とダルビッシュ。翌8日は八木が好投したものの、延長10回に抑えのマイケル中村が赤田将吾中堅手にサヨナラ打を浴び黒星。ダルビッシュの勝利がなかったら、罰金もののところだった。

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