日めくりプロ野球 6月

【6月23日】1990年(平2) 「何がボークだ!」金田正一監督 審判ど突き“実演”退場

[ 2010年6月1日 06:00 ]

 【西武13―6ロッテ】「なんでや!何がボークや!このバカタレ!」。7回2死二、三塁。ロッテ・園川一美投手が、西武・田辺徳雄遊撃手に投げた3球目をめぐって、ロッテ・金田正一監督ベンチから飛び出した。顔面を紅潮させたまま高木敏昭球審に突進。気がつけば両手で強く押し、右足、左足の順で蹴り上げていた。
 「退場!退場!」高木球審も顔を真っ赤にして宣告した。「何や、コラッ!」、コーチ陣に制止されながらも、なおもやり返そうとする金田監督の態度に、高木球審もついにブチ切れ。マスクを地面に叩きつけ「やってられるか!」と吐き捨てた。

 退場歴はこれで7回。宣告されたくらいで引っ込むカネやんではない。「こっちに来んか!」と審判団を呼びつけマウンドへ。ぼう然と立ち尽くす左腕園川のグラブをひったくるように奪うと、自らセットポジションをとり「これがボークや!ちゃんと見てみい!あれがボークやったら全部ボークや!」と往年の400勝投手は“実演指導”。これを相手にせず、再度退場を促されると、はめていたグラブを投げつけ、ボールをグラウンドにたたきつけ、さらに審判団に向かって行こうとした。
 “これ以上はまずい”。徳武定之ヘッドコーチが後ろから金田監督の腕をつかみ懸命に止めた。怒りが収まらないカネやん。今度は「もうやめや。もうやめや!」と選手、コーチをベンチへ引き揚げさせてしまった。
 放棄試合。最悪の選択を金田監督は決断しようとしていた。ネット裏にいたロッテの高見沢管理部長が焦ってベンチに行き、いきり立つ金田監督を説得。提訴試合を条件に8分の中断で試合は再開したが、リズムが狂ったロッテは逆転を許し、気がつけば7点差をつけられ大敗した。
 金田監督がここまで大暴れしたのには理由があった。西武の伊原春樹三塁コーチが、園川の投球前にコーチスボックスから出て、本塁方向にスタートを切る“偽走”をして、三塁走者がホームスチールしようとしたかのように見せたと主張。焦った園川が慌てて本塁へ投げたというものだった。
 伊原の行為はルール違反で、園川も焦って投げたかもしれないが、ボークになるほどのものではなく、一度静止しているとするロッテ側。しかも、審判は伊原コーチが「ボークだ、ボークだ」と大声でアピールしたことに促され半信半疑ながら判定したと金田監督は確信。それが余計に腹立たしく、強い態度で審判団に詰め寄ったのだった。
 五十嵐洋一三塁塁審はこう説明した。「ボークを誘発する行為はよく取り締まっている。今回の場合はボークを宣告した後に、伊原コーチは出てきている。伊原コーチに言われたからボークと判定したわけではない」。
 「暴力を振るったことはワシが悪い。クビにでも追放にでもすればええ。しかし、判定は納得していない。ワシもクビだが、アイツ(高木球審)もクビにする。最後まで戦う。審判のひどい判定で何人の選手がつぶれていると思っているのか」。
 徹底抗戦を宣言した金田監督だが、連盟から罰金100万円と出場停止30日という重い処分を課された。それでも“口撃”を止めなかったが、ようやく球団社長にお叱りを受けて矛を収めた。心身ともにダメージを受けた高木審判はその後、グラウンドから去った。後味の悪すぎる梅雨時の西武球場の騒動だった。

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