日めくりプロ野球 5月

【5月30日】2000年(平12) ドラフト制後“最速”!河内貴哉、巨人ねじ伏せた

[ 2010年5月1日 06:00 ]

 【広島8―2巨人】先制の一発を浴びた直後だった。打席には巨人の3番江藤智三塁手よりもさらに怖い、4番松井秀喜中堅手。既にシーズン14本塁打を放っている強打者を迎え、18歳の高卒ルーキーがビビらないはずがなかった。
 が、この左腕投手、ゴジラに真っ向勝負を挑んだ。追い込んだ後のウイニングショットは、アウトローのストレート。この試合の最速145キロに背番号55のバットは空を切った。空振り三振。ホームランを打たれたことはすっかり忘れたかのように、胸を張って一塁側ベンチへと戻って行った。

 初対決の松井から三振を奪ったのは、広島の先発ルーキーの河内貴哉投手。中日、近鉄との競合の末、広島が引き当てた注目の超大型新人はプロ4試合目で巨人戦に初先発。初回に1点を失ったものの、回が進むにつれ球が低めに決まり、7回までわずか3安打に抑え、大量点にも守られ、見事プロ初勝利をマークした。
 高卒ルーキーの巨人戦での勝利はいくらでもあるが、ドラフト制後、5月までに勝ったのは河内と67年(昭42)の阪神・江夏豊投手のみで33年ぶりの快挙。先発で白星をマークしたのは7人いるが、5月は最速記録で広島の投手としては初めての快挙だった。
 「巨人ですか?あまり意識はしませんでした。打者がよく打席を外していたので、イライラしているなって分かりました」と、まるでベテラン投手のように冷静に打者を分析。前半は直球で押したが、後半はカーブとスライダーでカウントを稼ぎ、ここぞの場面でストレートを投げた。
 「真っ直ぐ狙いの打者がそれをとらえられないでいる。打ち損じて打者がイライラしたところで、もう一度ストレートを投げて打ち取る。すごい。前の背番号24とはモノが違う」と言ったのは、広島の“前の背番号24”大野豊元投手。ドラフト外入団ながら148勝を挙げた同じ左腕は、河内のスケールの大きさを認めた。
 巨人は河内の先発を全く予測していなかった。先発は広島のエース、佐々岡真司投手と踏んで、試合前のミーティングで40分間もビデオを見ながら、対策を練った。黒田博樹投手かもしれないという情報もあったが、河内は全く眼中になかった。
 広島・達川晃豊監督は広島市民球場での試合前、いきなり河内に告げた。「きょうはおまえや」。変な緊張感に何日も悩まされると、ルーキーはつぶれると考えた達川監督は直前に先発を言い渡した。
 対巨人への奇襲戦法にも見えるが、達川監督いわく「巨人の先発は工藤(公康投手)。河内に将来、工藤のようなサウスポーになってほしいという願いを込めた。大きく育ってほしいからね」。
 その工藤が拙守にも足を引っ張られ、2回3分の2で降板。偉大な先輩と投げ合いとはならなかったが、河内が生まれた82年1月6日に西武入りが決まった工藤との、因縁の対決を制したことが、河内の本格的なプロ第一歩となった。
 初勝利から11年。河内は左肩を痛め、育成選手として広島に籍を置く。積み重ねた勝利は通算14勝。“前の背番号24”には追いつけておらず、番号は124番になったが、07年から遠ざかっている1軍復活をまだあきらめるわけにはいかない。

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