日めくりプロ野球 5月

【5月26日】1999年(平11) 佐々木主浩“球種盗み”疑惑に「日本の野球はつまらん」

[ 2010年5月1日 06:00 ]

 【横浜5―4ヤクルト】最後の打者、ヤクルト・佐藤真一左翼手を投ゴロに打ち取り、一塁に送球しゲームセット。その瞬間、マウンド上の横浜・佐々木主浩投手は一塁側のヤクルトベンチに向かって怒鳴った。
 「バカ!タコ!」。谷繁元信捕手や駒田徳広一塁手らにたしなめられて、それ以上グラウンドには似合わない言葉を口にすることはなかったが、試合に勝っても怒りは収まらなかった。

 ロッカールームに戻る際、番記者に向かって強い口調で言った。「つまらないよ、日本の野球は。腕を組んだり、組まなかったり。やってたでしょ一塁側で」。佐々木は一塁コーチャーの渡辺進コーチの“不審な行動”を指摘。球種をいちいち打者に教えているとし、それがイライラの原因だった。
 9回1点リードで登板した佐々木だが、最初から不審な動きに神経をとがらせていた。先頭の宮本慎也遊撃手を四球で歩かせると、バントで二塁に進められ、2番真中満右翼手に右前打を浴び、ヤクルトに3年ぶりの得点を許した。サインを盗まれている、球種を読まれていると判断した佐々木は、伝家の宝刀フォークボールを抜くのをためらい、14球続けてストレートを投げ続け、結局それを狙い撃ちされる形となった。
 延長戦にもつれ込み、10回進藤達哉遊撃手の適時二塁打が出て何とか勝ち越した横浜。その裏、4番ロベルト・ペタジーニ一塁手からの打順も3者凡退に退けた大魔神だったが、はらわたは煮えくり返り、思わぬ言葉となってそのまま飛び出してしまったのだった。
 罵声を浴びせられたヤクルト。球種を打者に教えていると疑われた渡辺コーチは“疑惑”を一笑に付した。「(年俸)5億円ももらっている選手がそんなことを言うなんて…。なんか寂しいよね。球種を見ているんじゃなくて、見せているんでしょ」。
 タイムリーを打った真中も困惑気味。「そんなこと言っているの?サイン盗みなんてとんでもない。だいたい一塁コーチが出したって(左打者の)僕には見えない。渡辺さんは(腕を組んだり)紛らわしいことをやるけど、別にそれで球種が何か教えているわけじゃない」と神経質になっている日本一のストッパーに首をかしげた。
 ヤクルトの“当事者”が冷静だったのに対し、いつもは温厚な若松勉監督は声を荒げた。「サインなんて盗んでいない。やるわけないでしょ。大金をもらっている選手がなんてつまらないことを言うんだ。次も言うようなら…」と言って言葉をのんだが、横浜側に強い態度にでることも辞さない雰囲気だった。
 佐々木が横浜から海を渡り、大リーグへ活躍の場を移したのは翌2000年。ひじの手術をめぐって、球団との考え方の違いが発端とされるが、「日本の野球はつまらない」発言がメジャーに行く動機の中に全くなかったとは言えない。佐々木がいなくなった横浜は2年間3位を保ったが、以後98年の日本一が夢だったかのように、下位をさまようことになった。

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