日めくりプロ野球 5月

【5月23日】1974年(昭49) 審判団連日の不手際 阪神 伝統の一戦であわや試合放棄

[ 2010年5月1日 06:00 ]

 【巨人4―3阪神】確かに2度「アウト!」と塁審はコールした。が、白球はグラブからこぼれ落ちていた。「セーフだろ!どこに目を付けとるんや!」巨人の“鬼軍曹”須藤豊三塁コーチが、富沢宏哉二塁塁審の前にすっ飛んでいった。
 9回裏、1死一塁。巨人・柳田俊郎外野手のバントを処理した、阪神・江夏豊投手は迷わず二塁へ送球。藤田平遊撃手がベースに入ったが、併殺を焦ったのか、江夏からの送球を捕り損ねた。しかし、判定はアウト。巨人側が血相を変えて怒るのも無理はなかった。

 協議に入った審判団だが、答えはすぐに出た。「遊撃手の後ろから判定したので、よく見えなかった。アウトをコールしたが、すぐに疑問に思ったので、他の審判の見解を聞いたところ、明らかに落球しているというので、判定を改めることにした」と富沢塁審。一転してセーフとなり、2死一塁が、1死一、二塁となった。
 納得しないのは阪神だ。金田正泰監督は猛烈な勢いで、審判団にかみついた。9回に逆転した試合が、富田勝内野手の同点本塁打で追いつかれた上に、サヨナラ負けの可能性が出てきたのだから簡単には引き下がるわけにはいかなかった。「アウトって何度も言うたやろ。巨人が抗議したから、変えたんか。審判の判定は絶対やないのか」。守っているナインをベンチに引き上げさせ、試合放棄も辞さない構えをみせた。
 中断すること27分。その間に阪神ファンの一人が左翼ポールによじ登る騒ぎが起こるなど、後楽園球場は騒然。「なにモタモタやっているんだ!昨日と同じやないか!」。熱心な巨人ファンが試合再開を決断できない審判団に向かって厳しい言葉をぶつけた。
 昨日と同じ…。審判団にとっては耳の痛い言葉だった。前日5月22日、同じ巨人―阪神7回戦は6回表終了で雨天コールドゲーム、4―2で阪神が勝った。まずかったのは審判団の試合進め方だった。試合開始前から雨が降り続く中で、強行してプレイボールをかけたが、雨は時間がたつにつれ激しくなった。3回に一度続行か中止か、審判団は協議したが、なんとか試合を成立させようと、4回に入った。
 5回終了時点でグラウンド整備を行い、土を入れ多量の乾燥剤をまいた。6回表を終了し再度整備をしたが、結局中断。そして30分後に、コールドゲームが宣告された。
 これに怒ったのは巨人ファンだった。巨人は2点負けている展開で、阪神の攻撃だけ終えて、巨人の攻撃をやらないのは不平等だと主張。しかも、6回は2番土井正三二塁手からの打順。3番長嶋茂雄三塁手、4番王貞治一塁手と見せ場がやって来るところだった。
 昔のファンは激しい。一部がグラウンドに物を投げたり、なだれ込んだり、さらには阪神がコールドゲームを促した、という誤った噂が流れ、過激な観客が選手の移動用バスの前で待ち伏せをした。
 腹の虫が収まらないG党に、阪神ナインは1時間も球場のロッカールームで足止めを食らう始末。3回でノーゲームにしておくか、6回裏の攻撃を少々雨が強く、コンディションが悪くても続けるかしておけば、暴動にはならなかった。
 2日続けての伝統の一戦での不手際。金田監督はアウトからセーフの判定に渋々同意し、試合は再開されたが、リリーフに立った江夏の気持ちはもう切れていた。王に左中間に打ちるポテンヒットを許し、巨人がサヨナラ勝ちを収めた。
 「富沢さんは罰金を払えばいいのだろう、と言ったがそういう問題じゃない。1度判定したことをすぐに変えるのは草野球だ!」。阪神・田淵幸一捕手は捨てゼリフを吐いて、後楽園を後にした。

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