日めくりプロ野球 5月

【5月14日】1996年(平8) サヨナラ弾の堀幸一 ヒーローインタビューで“逃げた”

[ 2010年5月1日 06:00 ]

 【ロッテ4―3ダイエー】上機嫌でインタビューを受けていた、ロッテの堀幸一遊撃手が突然、いなくなった。何が起きたか分からないアナウンサーはきょとんとするばかり。ようやく少し間を置いて戻ってきたが、その時の瞬間について堀は笑いながら答えた。
 「後から急に肩を組まれた。過激なダイエーファンが襲いに来たのかと思ってびっくりした」と“逃走した”理由を述べた堀。ここまで1度も連勝がないダイエーが延長戦での戦いを考え始めた、9回2死走者なしからのサヨナラ本塁打。確かに熱烈なダイエーファンに何かされかねない状況ではあった。

 しかし、堀の肩に手を回したのは、ライトスタンドからグラウンドに“乱入”したのは、中年のロッテの大ファン。喜びが爆発し、ついついフェンスを乗り越え、一目散にヒーローめがけて走ってしまったということだった。
 「もう守りにつきたくない」。その一心が自身プロ3度目のサヨナラ打につながった。走者なしで一発狙っていい場面。吉田豊彦投手のストレートにだけ的を絞って放った一撃は、センターバックスクリーンに飛び込んだ。
 「秋山(幸二中堅手)さんの追い方を見たら捕られるかなって思いながら走った」ため、スタンドの歓声と一塁側ベンチの喜びようで初めてサヨナラホームランということに気がついた。「鼻が痛い。ヘルメットのつばが何度ぶつかったことか」。手洗い祝福を受け、頭をバンバンたたかれた堀はそれでも嬉しそうに笑顔をみせた。
 87年、長崎海星高からドラフト3位で入団した。西武を除く11球団から調査書が届くほどで、高校生内野手としては注目されていたが、当時の目玉はPL学園高の立浪和義内野手と浦和学院高の鈴木健内野手の左打者2人。ロッテは1位で香川・尽誠学園高の伊良部秀輝投手の一本釣りを決めており、2位でも投手の方針。堀は早くても3番目だった。
 それまでに指名されてしまえばあきらめるしかなかったが、運と縁があった堀は「天にも昇思いで」プロ入りした。当時のロッテの高見沢喜人スカウトは堀を指名した理由について「足はまあまあ、守備はたいしたことなく、打撃も長打力があるわけではない。一番良かったところ?負けん気の強い性格がプロ向きだった」。
 ファームでもコーチの言うことで納得できないことは右から左に受け流す。「自分がしっくりくるやり方でやりたい」。ルーキー時代から、落合博満内野手顔負けの“オレ流”だった。
 3年目。シーズン途中で2軍に落とされた時、堀は30万円を握りしめて浴びるほど酒を飲んだ。「どうしてオレが落とされるんだ」と悔しがりながら飲んだ。30万円は酒代ではなく、寮の門限破りの罰金に用意したものだった。その翌年には22歳で4番に座った。1軍定着したのはこの年からだった。
 2010年、23年目を迎えた堀は2軍スターとなった。あと173本に迫った2000安打は最近の成績から考えれば、けっこう遠く感じる。ロッテの生え抜きでは41歳の内野手は球団史上最年長であり、2000安打もロッテ一筋の選手では有藤道世内野手しかいない。41歳。最後の川崎時代、オリオンズ時代からの選手は、まだまだユニフォームを脱ぐわけにはいかない。
 

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