日めくりプロ野球 5月

【5月3日】2009年(平21) WBC戦士 稲葉篤紀 涙のサヨナラ本塁打

[ 2010年5月1日 06:00 ]

お立ち台で思わず涙を流す稲葉
Photo By スポニチ

 【日本ハム6―5西武】思わず涙があふれ出た。小さい時から「泣き虫あっちゃん」と言われるほど、実は涙腺はゆるい方だった。それでも36歳の大人。人前で涙を見せることは滅多になかった。しかし、きょうは涙がとめどなく出て止めることができなかった。
 ゴールデンウイーク真っ只中の西武との3連戦はすべて延長戦。4時間を超えたゲームにケリをつけた、日本ハムの3番稲葉篤紀右翼手の札幌ドーム右中間スタンドに飛び込んだサヨナラ本塁打。

 「ずっとチャンスで打てなくて、つらい思いをしていたので…」。言葉に詰まって次の言葉が出てこない。2試合連続のサヨナラ勝ちも劇的だったが、ドームを埋め尽くした4万人超の野球ファンは第2回WBCの世界一メンバーである“サムライ”がヒーローインタビューで流した涙は衝撃的ですらあった。
 打率3割8厘も得点圏打率は1割6分1厘。走者を還すのが役目のクリーンアップとしては恥ずかしい数字であった。前日5月2日まで日本ハムは13勝11敗の2位。楽天に2ゲーム差をつけられていた。
 好機に稲葉の一本が出ていれば…という試合は少なくなかった。「打ちたい病が出てしまった」と、狙い球を絞らず、とにかく打ちたいという気持ちでボール球にも手を出し凡退の日々。責任感が強いだけに、開き直ることが簡単にできず、それがまた重圧となってのしかかった。
 負けられない戦いを繰り広げてきたWBCが終わり、オープン戦に出る暇もなくシーズンイン。開幕はもちろん身が引き締まる思いで迎えたが、米国で激闘を演じたサムライ戦士たちは疲労のピーク。稲葉も例外ではなく、どうも乗りきれない自分がいることに気がついていた。
 それを断ち切ろうと練習に打ち込んだが、気持ちがリフレッシュできていない以上、いい結果は出なかった。そんなベテランに梨田監督は2日の西武戦の前、打撃練習をさせなかった。「神様が試練を与えているんだ。考え込まず、楽しくやったら」という言葉をかけてもらい、冷静になれた。
 軸足に体重が乗らず、上体だけで打っていることに気がついたのは、この日の試合前のこと。がむしゃらに練習するだけでは得られなかったヒントは休むことで得られた。
 このサヨナラ弾で吹っ切れた稲葉は徐々に復調。終わってみれば4年連続となる打率3割をキープ。安打数150、打点85は前年の成績を上回った。憲法記念日の涙の本塁打は稲葉にとっても09年の記念日となった。

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