日めくりプロ野球 5月

【5月16日】2003年(平15) 直球勝負!清原和博VS伊良部秀輝

[ 2009年5月1日 06:00 ]

直球勝負を挑んだ伊良部(右)だが清原に手痛い先制の一撃を浴びた。清原にとっては対伊良部10本目のアーチだった
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 【巨人4-0阪神】変化球は1球たりとも投げなかった。カウント2-2からの勝負球も当然直球。阪神・伊良部秀輝投手は145キロのストレートを内角高めに構える矢野輝弘捕手のミットめがけて思い切り投げた。
 真ん中に入った。天性のスラッガー、巨人・清原和博一塁手がこれを逃すはずがない。5万3000人の大観衆、鳴り響く応援団の楽器の音があったとしても、バットから白球が弾かれる快音は誰の耳にも届いた。夜空に舞い上がった打球は一直線に左中間スタンドへ。清原のシーズン3号先制ソロアーチ。伊良部から7年ぶりに放った1発は、同投手から計10本目の区切りの一撃でもあった。
 肝心なところで「力んでしまった」と伊良部。5球オールストレートは、伊良部が真っ向勝負して悔いを残したくなかったからだった。1打席目。追い込んでおきながら、フォークボールが甘く入り、中前に運ばれた。直球を痛打されたのなら納得もいくが、落ちなかったフォークを打たれたことに自分で腹が立っていた。
 次は直球勝負、と決めての第2打席。そしてこの試合最初の三振も清原から奪おうと密かに思っていた。それが証拠に打順が一巡するまで三振を敢えて取りにいかず打たせてアウトを重ねた。非常にも結果は見ての通り。三振どころか、ストレートを完ぺきに打たれた。
 10年前もそうだった。93年5月3日、ロッテの投手だった伊良部は当時日本最速となる158キロのストレートを西武の主砲だった清原に2球続けて投げた。直後の157キロを右中間にもっていかれ二塁打。若さゆえのストレート勝負は清原に軍配が上がった。
 しかし、34歳になった伊良部は10年前とは違って冷静だった。6回の3打席目。今度は114キロのカーブで清原を見逃しの三振に仕留めた。「チームが勝つことが第一」と心から思っていた。
 18年ぶりの優勝を目指し、首位を走る阪神。ロッテ時代は優勝に手が届かなかった伊良部にしてみれば、個人的な勝負の美学に酔っている場合ではなく、勝つことが目的。1度やられたボールでまた勝負を挑むほど青くはなかった。
 清原も伊良部と同じだった。「全く余裕がなかった。食らいつくのがやっと。伊良部との勝負?そんなことよりも勝つんだという執念が打たせてくれたホームランやね」。巨人はここまで対阪神0勝5敗1分け。5ゲーム差をつけられ、2位だったが、これ以上離されるわけにはいかなかった。
 清原は両太ももの裏が肉離れ寸前という状態での強行出場だった。試合前、1時間半もマッサージを受けなければ、グラウンドに立つことすらできなかった。それでもタイガースに勝つという強い気持ちがあればこそのスタメン出場だった。
 9回にも伊良部から代わった、久保田治投手のストレートをたたき、この日3本目となる右前打を放った清原。これが仁志敏久二塁手のトドメの3点本塁打を呼んだ。盛り上がる巨人ファンの歓声を 、8回まで清原の本塁打による1失点に抑えた伊良部は甲子園のロッカールームで汗をぬぐいながら独りで聞いていた。

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