日めくりプロ野球 4月

【4月13日】2006年(平19) 600日ぶり!桑田真澄 最後の173勝目

[ 2011年4月13日 06:00 ]

5回4安打1失点で今季初勝利の先発・桑田600日ぶりの勝星を挙げヒーローインタビューを受けファンに応える
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 【巨人9―1広島】「長かった。勝つことが当たり前の中で小さい頃から野球をしてきたから」。1つの白星がこんなに嬉しくそして難しいことがプロに入って173勝目であらためて実感できた。

 プロ野球の世界に身を投じて21年目、巨人・桑田真澄投手が04年8月21日の広島23回戦(広島)以来、実に600日ぶりに勝ち投手となった。本拠地東京ドームでは03年8月19日の横浜戦以来、968日ぶり。大阪・PL学園高時代からの輝かしい球歴を知る多くのファンにとっても「長かった」と思わざるを得ない時の流れだった。

 すべての経験、すべての球種、そしてすべての野球の引き出しを使い切ることを誓って、巨人のエースナンバー18を背負った男は東京ドームのマウンドに登った。前回登板の6日のヤクルト戦(神宮)では4失点で5回KO。直後に原辰徳監督は言った。「真澄、残されたのは白星だ。俺たちも協力するが、自分で勝ち取らなきゃならないぞ」。

 後がない。桑田は初回からこれが最後かのように広島打線に立ち向かった。1死二塁のピンチに3番新井貴浩三塁手には外角低めいっぱいのストレートで、4番嶋重宣右翼手には内角ギリギリのこれもストレートでともに見逃し三振に仕留めた。最速は138キロ。決して速くない真っ直ぐだが、打者の仕草から変化球狙いと読んだ桑田の洞察力が一枚も二枚も上回った。

 沸き上がる一塁側から右翼スタンドの巨人ファン。鮮やかすぎる投球に、広島ファンも思わずうなった。「監督、コーチ、チームメイト、それにファンの方々にこんなに励まされ、支えられたことはなかった。生きているのではなく、生かされていると感じた」。桑田は2回の投球に備えてベンチ横でキャッチボールを始めると、思わずスタンドを見渡した。

 桑田がこの日にかけていることを11歳も年下の阿部慎之助捕手もよく分かっていた。「桑田さんを打ち崩すとしたらどう攻めますか?」。内田順三打撃コーチをつかまえて、阿部はそんな質問をしている。相手ベンチがどう攻略プランを立ててくるか、あらゆる可能性を想定してリードし、どうしても桑田に勝たせたかったのだった。

 4回、嶋に本塁打を浴びて同点とされた。巨人ナインは試合前、チームリーダーの小久保裕紀三塁手が円陣で言った言葉を思い出した。「桑田さんに楽に投げてもらえるようにしよう」。すぐさま3本のヒットを集めて、2点を入れて援護した。

 チームメイトの熱い思いに桑田も気持ちが動いた。打席で二ゴロを打ち、全力疾走。勢いあまって?一塁ベースを踏み損ねて右足首を軽くひねってしまった。

 5回、足首に痛みを感じながらもマウンドに立った。左直、三振、遊ゴロ。3人で終わらせた。「あれがなければ7、8回くらいまでいく気持ちだった。交代したくはなかった」と桑田。降板後の打線の爆発、救援陣の好投…。桑田の気迫が導いたものだった。

 しかし、代償は大きかった。足首の痛みはなかなか引かず、先発ローテーションを1回飛ばしたが、それでも不安があった。4月27日、場所を広島に代えての6回戦。桑田は3回持たず6失点で降板。東京ドームでの歓喜の1勝がプロ野球での桑田の最後の勝ち星なら、広島でのKOが桑田の通442試合目の登板にして、最後の1軍での姿だった。

 その後、メジャーに挑戦し、ユニホームを脱いだが、エースナンバーを付けた男にしては、巨人での最後の登板は寂しすぎるものだった。
 

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