日めくりプロ野球 4月

【4月27日】1988年(昭63) 親父を超えた!長島一茂、プロ8打席目初安打初本塁打

[ 2010年4月1日 06:00 ]

 【巨人6―4ヤクルト】その瞬間、神宮球場の4万を超える観衆は歓声を上げ、総立ちになった。午後7時59分、ヤクルトのドラフト1位ルーキー、長島一茂内野手が960グラムのバットの真芯に当てた打球はセンターへ緩い放物線を描くと、そのままバックスクリーンに飛び込んだ。

 「体がフアフア浮いているみたい。不思議な感覚でベースを一周した」と夢心地の一茂。手荒い祝福をチームメイトから受けるのも初めてだったが、初本塁打は慣れないことばかり。まず、マスコットガールから手渡されたぬいぐるみをどうしたらいいか戸惑った。「スタンドに投げ入れるんだ。ファンサービスだ」と伊東昭光投手に教えられると、慌てて一塁側ベンチ上のファンに向かってトスした。
 ベンチでホッとひと息ついていると、今度はボールが渡された。「とっとけ。一生に一度だ」。先輩選手から手渡された白球にきょとんとした。これが自分が今打ったプロ初本塁打のボールと分かると「本当ですか?」と思わず大声を挙げた。まさか手元に帰ってくるとは…思わぬプレゼントに、相好崩す一茂だった。
 6回1死。代打で出場した。プロ8打席目で放った初安打初本塁打。相手は父・長嶋茂雄が野球人生を捧げた、読売ジャイアンツ。ミスター・ジャイアンツと呼ばれた父の初安打は10打席目で二塁打。初本塁打は22打席目。数字の上では偉大な父より早く感激を味わうことになった。
 「周囲の歓声?打席に入るときは分からなかった。集中していたからではなく、緊張していたからでしょう。変化球は全く頭になかった。ストレートだけを狙っていきました」。
 元メジャー右腕、ビル・ガリクソン投手のストレートに負けず打ち返した一撃だった。4月9日の対巨人2回戦、プロ初打席に立った長島と対戦したのも同じガリクソンだった。ストレートで2球続けてポンポンとストライクを取られると、最後はスライダーで二ゴロに仕留められた。完全に子ども扱いされての凡退。初球のストレートに思い切りバットを振れなかった自分が情けなかった。だから2度目の対戦は真っ直ぐ狙いだった。
 ガリクソンも大リーガーとしてのプライドがあった。ルーキー相手にファーストボールで牛耳りたいという気持ちが強かった。結局は一茂にソロアーチを浴びるなど、この試合計4発の本塁打を打たれたが、すべてソロ弾。「走者がいなければ、ファーストボール勝負は当たり前」とガリーも闘争本能むき出しで注目ルーキーと勝負した。
 「体のキレは親父さんの方があるけれど、パワーは息子の方が上かもしれない」とヤクルト・関根潤三監督。当のミスターは息子のメモリアルアーチーを見られるず、所用で群馬に出かけていた。それでも帰宅途中の車の中でラジオ中継をしっかり聞いていた。
 「打ったのはストレートということだけど、早くレギュラーになってファンのみなさまの期待に応えられるような選手になってほしい。努力を忘れないでほしい」。東京の自宅前に集合した50人を超える報道陣に出先から父はコメントを寄せた。
 昭和最後のシーズンで初安打初本塁打を記録した男は、平成の世でも初安打初本塁打を記録した。89年4月15日の大洋2回戦(横浜)で放ったシーズン17打席目の初安打も本塁打だった。プロ野球通算3万号本塁打も実は一茂が打ったもの。通算18本塁打ながら、記憶に残る本塁打が多い。やはり人とは違う星の下に生まれているのかもしれないと思えてならない。

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