日めくりプロ野球 4月

【4月11日】2008年(平20) 期待薄?山下勝充 その時、ノムさんはトイレ

[ 2010年4月1日 06:00 ]

プロ初のサヨナラ打を放った山下(右)は手荒い祝福を受けた後、喜びを爆発させた
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 【楽天5―4オリックス】3時間28分の熱戦にピリオドを打った楽天の代打山下勝充内野手のサヨナラ打がセンター前に達した瞬間、指揮官の姿はベンチになかった。

 「“ピンチヒッター、山下”ってアンパイヤに言ってトイレに行ったんや。ずっと我慢しててよ。全力疾走で行って、はよ済ませてと思ったけど、たまっていたから長いこと長いこと…。“ビャー”ってやっているうちにまた“ワッー”ってさあ…。止まらんのよ、なかなか。長い野球人生でサヨナラの瞬間にベンチにいないのは初めてやな。傑作や」。
 “途中退場”の理由を照れ笑いを浮べながら説明した野村克也監督。延長10回裏、1死二塁のサヨナラ機で代打に起用していながら、「あいつには悪いけど、打つとは思わないもん」とまで言われ、用をたしに行かれてしまった山下。ノムさん同様“ちびる”思いで打席に入った。
 07年は1軍出場なし。プロ9年目、30歳を超えた今年、やらなければ来年はないという覚悟だった。4日前に1軍に昇格したばかり。アピールするには絶好の機会に、オリックスの抑え山口和男投手の2球目の真っ直ぐたたいての決勝打だった。
 三塁側ベンチから飛び出すナインに祝福の“ミネラルウオーターシャワー”を頭からかけられながら、背番号38は一番見てもらいたかった監督の姿を探した。笑ってくれているのか、喜んでくれているのか、気になって仕方がなかった。が、後で聞いてみれば殊勲の快打は野村監督の目には入っていなかったとか…。
 がっかりするところだが、そこがチーム一の性格の良い男“梅さん”(漫画「ど根性ガエル」に出てくる、すし職人の佐川梅三郎に似ていることから付いた愛称)、納得するのも早い。「監督が“気持ちがいい”時に僕も気持ちが良かった。それでいいです」。チームの連敗を6で止めるプロ初のサヨナラ打、初の1軍お立ち台に「ええ顔しとる」というノムさんのお褒めの言葉に満足した。
 近鉄時代の03年にはウエスタンリーグで本塁打19本、打率3割6分1厘で二冠王を獲得した、打撃には定評のあった選手。05年、楽天球団設立時に近鉄から移ったきた際は「4番候補」の一人でもあった。9年目でようやく、勝負強さの一端を披露することができ、1軍では8年ぶりとなる本塁打を5月6日のソフトバンク戦で放った。
これからと思っていた矢先のオフに戦力外通告を受けたのは青天の霹靂だった。トライアウトを受けたものの、他球団からの誘いはなく、ユニホームを脱ぐ決意をした。あの、サヨナラの瞬間、ノムさんがベンチで見ていたら印象は違っていたのだろうか?それはともかく、その才能を十分生かしきれず引退した選手の一人ではあった。
 09年に独立リーグの福岡でコーチ、10年は楽天のジュニアコーチとして野球とのかかわりは続いている。

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