日めくりプロ野球 3月

【3月24日】2001年(平13) ジョニー、勇気のスローカーブ 松坂に投げ勝つ

[ 2011年3月24日 06:00 ]

 【ロッテ6-3西武】21世紀のプロ野球開幕日。西武ドームでの西武-ロッテ1回戦は、思わぬ展開で2時間52分のゲームが終わった。初回3点の先制パンチをロッテに食らわせた西武が、エース松坂大輔投手で逆転負け。「あり得ない」の声が一塁側からライトスタンドに詰め掛けたライオンズファンの口から漏れた。

 勝因は傷口を広げなかった3度目の開幕投手を務めた、ロッテ・黒木知宏投手の“勇気”だった。1回、2つの暴投と5番・高木大成左翼手の二塁打で3点を奪われた。「打たれたのはカーブ。暴投もカーブが指にかからなかった投げ損ない」とその表情が曇ったが、開幕初勝利を目指すこの日のジョニーはいつもと違った。「今までなら打たれたカーブを投げるのを怖がって止めていたけれど、きょうカーブを意識して投げた」。

 MAX146キロの直球より30キロ近く遅い120キロのカーブ。緩いボールをウイニングショットにするには、投手としてとても勇気がいる。打たれた時に、思い切りストレートを投げたのと比べ、悔いが残るからだ。

 以前の黒木はカーブを打たれると、これを封印してしまいストレート系の球に頼る傾向があった。だから西武打線も序盤でカーブを叩き、後は真っ直ぐ狙いで攻略する構図を描いて試合に臨んだ。

 しかし、黒木はひたすら勝負どころでカーブを連投した。すると、西武打線は2回から沈黙し、以後わずか2安打。ポイントゲッターの3番・松井稼頭央遊撃手、4番・DHのアレックス・カブレラの勝負球はすべて120キロ程度のカーブで翻弄し、2人合わせて7打数0安打。いつもと違うジョニーの投球スタイルに戸惑った。

 勇気を振り絞って投げるエースの背中をバックを守るロッテナインはちゃんと見ていた。松坂の自滅でもあったが、打線は6点を奪い逆転。黒木に開幕戦初勝利をもたらした。

シドニー五輪でともにメダルなしの屈辱を味わったチームメイトの松坂に西武ドームで投げ勝ったのは初めてだった。

 プレイボール直後、松坂は先頭打者の小坂誠遊撃手の初球を150キロのストレートで入った。「黒木さん、どうですか」と言わんばかりの速球を見せ、初回は三者凡退。黒木とは対照的な立ち上がりだったが、松坂は結局6回6失点でKOされた。

 その差はたった1球にあったと言っても過言ではない。高木にカーブを痛打されても、自分の決め球を信じて投げ続けた黒木と、2回にロッテの4番・初芝清三塁手へ投げた6球目の際どいスライダがボールと判定され、四球を出してムキになった松坂。よく「自分の投球をしろ」と投手コーチは言うが、その言葉の重みがあらためて実感できた開幕戦だった。

 「お前がいたから今がある」「永久血番54」--。08年3月15日、千葉マリンスタジアムのスタンドには数え切れないほどのプラカードが掲げられた。楽天とのオープン戦終了後、07年限りで現役を引退した黒木の引退セレモニーが行われた。オープン戦としては異例の満員札止め。5000人のファンが当日券を買えずに入場できなかった。

 通算76勝68敗。プロ野球選手としては大した数字ではない。それでも、ジョニーがこれだけのファンにユニホームを脱ぐことを惜しまれるのは、闘志むき出しに投げる背番号54のから強者に立ち向かう心意気を教えられたからだろう。

 解説者として活躍するジョニー。投手として、人間として生きていくうえで大切な勇気を多くの人に伝えてくれることだろう。(08年3月24日掲載分再録 一部改変)

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