日めくりプロ野球 3月

【3月22日】1992年(平4) オレは逃げない!野茂が挑んだオールストレート勝負!

[ 2011年3月22日 06:00 ]

 オープン戦とは思えない緊張した空気が18・44メートルの間に流れた。浜松での中日-近鉄のオープン戦。セパ交流戦のない時代、普段顔を合わせることのない1人の打者との真剣勝負を心待ちにしていたのは、近鉄の若きエース野茂英雄投手だった。

 相手は落合博満内野手。球界初の3億円プレーヤー、オールスターでの対戦はあるが、あれはお祭り。日本シリーズを除いてはこの場でしか力勝負ができない。野茂は志願のドラゴンズ戦登板だった。

 野茂がここまでこだわったのには訳がある。ルーキーイヤー90年の球宴。16万9624票を集め、ファン投票で選出された野茂について落合は「オジンくさい投手だ」と評した。決め球のフォークボールを多投し、直球勝負をしてこない投球と酷評して新人を挑発、対戦する機会があれば、ストレートを投げさせようとする誘いの言葉でもあった。

 7月24日、横浜スタジアムでの第1戦の9回表、対決は実現した。ここまで3打数3安打、球宴史上初の両リーグ猛打賞を記録した落合に“オジン発言”を耳にしていた野茂はストレートだけしか投げないことを決めていた。内角低め145キロの真っ直ぐに詰まった落合の打球は右飛。最初の対戦は新人投手に軍配が上がった。

 翌25日、平和台球場での第2戦はパは連投の野茂、セは中日・与田剛投手のオールスター史上初となる新人投手同士の先発で始まった。初回、落合を内角直球で遊飛に打ち取った野茂は3回、落合と3度目の対決を向かえた。

 「2球フォークを続け、3球目から真っ直ぐでインコースをえぐれば落合は三振する」。全パの西武・森祇晶監督からの落合攻略法を伝授されていた野茂だが、やはりフォークは封印した。

 愚直なまでにストレート勝負を挑み、結果は左中間スタンドに入る2点本塁打。「フォークは頭になかった。打たれても面白かった。いい勝負ができた」と野茂。挑発した落合も落合だが、逃げずに向かっていった野茂も並みの新人ではなかった。

 そんなストーリーの続編となったこの日のオープン戦。球宴同様、直球勝負で挑んだ。初回の第1打席、二死二塁の場面では外角低めで二ゴロ。3回も二死二、三塁のピンチで今度は右飛に打ち取った。ライトへの平凡な飛球に仕留めたストレートはこの日最速の148キロをマークした。

 「落合さんはやっぱり雰囲気が違う。投げる自分も気持ちの盛り上がりが違った。真っ直ぐで行くしかない、と全部ストレート勝負をしました」と野茂。7回7安打3失点の投球内容について聞かれても、いつものように口数は少なかったが、落合に関してのコメントは勝負が終わってなおも興奮しているのが、その口調からも伝わってきた。

 一方の落合は野茂と対戦した2打席でお役ご免。野茂との対戦について聞かれても無言のまま球場を後にした。しかし、オープン戦打率2割1分1厘の落合はこの対戦で、戦闘モードへのスイッチが入った。それを見抜いていたのは、ロッテ時代から落合を見続けてきた徳武定祐ヘッドコーチ。「野茂のおかげで落合の打席での気合いが戻ってきた」と、初球から積極的に打ちにいった姿を喜んだ。

 この年の球宴で2打席対戦し四球と二ゴロ。2人の激突はこれで終わった。落合のように、打席に迎えて興奮する打者を求め、野茂はメジャーに旅立った。

 どちらも一匹狼。自分のスタイルに誇りを持つプロフェッショナルであることは間違いない。(08年3月22日掲載分再録 一部改変)

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