日めくりプロ野球 3月

【3月18日】2006年(平18) 番長を痛打!高卒新人41年ぶりオープン戦2号本塁打

[ 2011年3月18日 06:00 ]

 開幕に向け、仕上がり順調な横浜のエース、三浦大輔投手に冷水を浴びせたのは、18歳7カ月の新人捕手だった。

 父親が漫画「硬派銀次郎」のファンで主人公・山崎銀次郎のように強くて優しい子に育ってほしいという願いを込めて名前を付けた、西武・炭谷銀仁朗捕手(07年から登録名は銀仁朗、京都・平安高出身)は、横浜スタジアムでのオープン戦の7回、三浦のスライダーを左中間スタンド中段へ運ぶオープン戦2号本塁打を放った。「あれで高校生?ウソでしょ。体もしっかりしているし、打席で雰囲気があった。すごいね」。05年、セ・リーグの防御率1位投手も驚く、推定飛距離115メートルの見事なアーチだった。

 「スライダーを狙っていました。2打席目(遊ゴロ)にスライダーで打ち取られていましたから、絶対に今度は打とうと…」。サウナに行けば「坊や、ええ体しとるなぁ、中学生か?」と尋ねられるくらい、丸刈りであどけなさの残る顔に似合わず、冷静さを持っていた。高卒ルーキーオープン戦2本塁打は、銀仁朗が生まれる20年以上も前の65年(昭40)、契約金5000万円新人として話題になった東京(現ロッテ)の山崎裕之内野手(埼玉・上尾高)が記録して以来の記録だった。

 この日は三浦から2安打。4回には俊足の田中充外野手の二盗も難なく刺した。「何か持っとるね。ええ、キャッチャーや」。捕手出身の伊東勤監督も関心した18歳は、オープン戦通算3割2分1厘、2本塁打、6打点の数字を残し、堂々の開幕1軍入りを果たした。高卒捕手としては大洋(現横浜)のドラフト1位だった谷繁元信(現中日、島根・江の川高)以来17年ぶりのことだったが、2000本安打の山崎、球界を代表する捕手の谷繁と肩を並べた記録をさらに上回る記録を銀仁朗は残すことになった。

 3月25日、インボイス西武での開幕戦オリックス1回戦で銀仁朗は8番・捕手でスタメン出場。開幕戦での高卒新人捕手の先発出場は51年前の55年(昭30)、愛媛・八幡浜高出身の大映(現ロッテ)・谷本稔捕手が駒沢球場での対東映(現日本ハム)戦にマスクをかぶって以来の快挙となった。

 快挙はさらに続く。7回二死、3打席目で川越英隆投手のカットボールを叩き中前打。プロ入り初安打は同時に、高卒新人捕手初の開幕戦安打となった。2リーグ制以降でも、開幕戦でのスタメンルーキーのヒットは、西鉄・中西太三塁手(52年)、近鉄・矢ノ浦国満遊撃手(60年)、中日・立浪和義遊撃手(88年)だけで、銀仁朗で4人目の貴重な記録だった。

 しかし、銀仁朗の表情は晴れなかった。「初安打は嬉しいけれど、ピンとこない。それより負けたことが悔しいです」。無難にこなした捕手としての仕事も、6回に1点リードの場面で、中村紀洋三塁手、指名打者の清原和博に連打を許し、逆転のきっかけをつくった単調な配球に対する自責の念が頭から離れないようだった。

 スタメンが知らされたのは、開幕前日の24日。「いつも床に就いたらすぐに眠れるのに、全然眠れなかった」。ならばと、キャッチャーミットを取り出し、右手にはめてみた。頭の中で先発の西口文也投手をどうリードするか、オリックス打線のデータなどを思い出しながら配球を組み立て、やがてミットをはめたまま熟睡していた。

 3月29日、ソフトバンク2回戦(北九州)ではダニエル・カラスコ投手から2回にプロ1号の満塁本塁打、水田章雄投手から6回に2点本塁打。高卒新人のグランドスラムはライオンズの大先輩、清原以来20年ぶり5人目。ルーキーの1試合2本塁打も93年に巨人・松井秀喜外野手が放って以来となった。

 次々と記録を塗り替える大型新人がつまづきだしたのは4月中ごろからだった。極端な打撃不振に陥り、それはディフェンスにも表れ、大事な場面でのパスボールなどが目立ち始めた。5月に入り、ついに2軍へ。結局、1年目は54試合に出場し1割8分1厘、3本塁打14打点。三振は33個を数えた。新人王最有力候補だったのは4月の段階だけで、44年ぶりの日本一に貢献した日本ハム・八木智哉投手に一生に一度のタイトルはさらわれてしまった。(08年3月18日掲載分再録、一部改変)

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