日めくりプロ野球 3月

【3月20日】1978年(昭53) “ヘビ球”投げる人気力士のいとこ 中日左腕投手緊急補強

[ 2009年3月1日 06:00 ]

左横手投げのクセ球で3勝したフレッド。巨人戦完投勝利の2日後に次男が誕生するなど日本での思い出も多かった
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 開幕まで2週間を切った。が、左腕投手不足に頭を痛めていた中日はハワイ出身の若手メジャーリーガーを緊急補強することになり、この日正式に契約した。中日では65年(昭40)のポール・ホイタック投手以来、13年ぶりの外国人投手獲得だった。
 大リーグ、エンゼルスのフレッド・クハウルア投手、25歳。大相撲の人気力士・高見山(現、東関親方)のいとこで、メジャーでは3試合しか投げていないが、3Aでは先発、中継ぎで9勝5敗の数字を残した。

 推薦してきたエンゼルスのバベーシ副会長は「ストレートは140キロ以上。カーブもスライダもチェンジアップもいい。それに彼の最大の特徴はヘビの動きのように揺れる“スネークボール”さ」と獲得に出向いた球団の外国人担当でもある足木広報部長に説明。トレードマネーは「事情が事情だから必要ない」と副会長は言った。
 もともとエンゼルスの他のサウスポーの獲得を進めていた中日だが、意中の投手がアリゾナキャンプを張っていたヤクルトとの練習試合で好投。エンゼルス側が「戦力として必要」として話が流れた。その“代わり”がフレッドだった。実は4年前、ハワイに遠征したノンプロチームの推薦もあって阪神が獲得に乗り出したこともあったが、入団を見送っていたという日本と多少かかわりのある投手だった。
 「ドラゴンズでプレーできることをうれしく思う。最高にエキサイティングだ」と4月1日に来日し、2日に名古屋へ。10日間2軍で調整し、4月12日にウエスタンリーグの南海戦に登板。結果は5回5安打2三振2四球で失点2。“初白星”のおまけまで付いた。
 しかし、権藤博2軍投手コーチの顔色はさえなかった。「変化球は1球ごとに微妙に握りを変えたりと工夫しておもしろかったが、もう少しストレートが走らないと変化球が生きてこない」。報告を聞いた1軍の中利夫監督、稲尾和久投手コーチはがっかりした。というのも、1軍は深刻な左腕不足。まともに投げられるのは先発の松本幸行投手ぐらいで、左の強打者が多いセ・リーグで戦うには早急に使えるサウスポーが必要だった。
 4月を9勝10敗で終えたドラゴンズは、フレッドを投げさせながら育成する方針に転換。5月に1軍へ上げると、稲尾コーチがマンツーマンで指導。手首だけでコントロールしていたのを体全体を使って投げるようにアドバイスすると、130キロ程度の球速は140キロまで上がり、変化球もあの“スネークボール”が揺れながら落ちるフォークボールのような役目を果たし、なんとか1軍で使えるレベルになった。
 6月18日の阪神13回戦(ナゴヤ)で先発し、6回を投げ1失点。故障明けの星野仙一、抑えの鈴木孝政がリリーフするという“特別待遇”で初勝利を飾った。9月22日、ナゴヤ球場で優勝に首の皮一枚で残っていた巨人相手に初完投勝利で3勝目を挙げ、日々進歩する技術に稲尾コーチは「来年は使える」中監督に来季の残留を要請した。
 しかし、球団は79年にローランド・ギャレット内野手、ロバート・ジョーンズ外野手を獲得したため、フレッドを解雇。25試合3勝4敗、防御率4・32という成績だった。稲尾の眼力は決して間違いではなかったようで、フレッドはその後大リーグに復帰。81年、フィリーズで中継ぎ投手として1勝をマークしている。
 

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