日めくりプロ野球 3月

【3月11日】1990年(平2) ノムさんが認めた“頭球術” 小宮山悟「野茂よりええで」

[ 2009年3月1日 06:00 ]

大学時代に慣れ親しんだ神宮のマウンドで白星をマークした小宮山。その“頭球術”は野村監督をうならせた
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 【ロッテ3-1ヤクルト】ヤクルト・野村克也監督が真顔で言った。「いい投手だね。野茂(英雄投手、近鉄)以上?ああ、野茂よりええてかもしれん。野茂は“行き先は球に聞いてくれ”というボールだけど、彼はストレートの使い方がうまいし、変化球のコントロールもいい。大したもんだよ。新人やろ。ウチの打者が本当につらそうに打っていた。ピンチになってもああいう投球ができるのはすごいな」。
 ノムさんが絶賛したのは、自軍の投手ではない。今さっき6安打1点に抑えられた、ロッテの新人投手・小宮山悟投手への評価だった。

 早大時代、通算20勝を挙げたマウンドにたったルーキーは予定の5回をはるかに超えて、9回1死まで投げ続け、オープン戦ながらプロ初勝利をマーク。後に“精密機械”といわれるほど、正確コントロールと絶妙な球の出し入れは、ルーキーにしてめったに投手を褒めない野村監督が舌を巻かせた。
 野茂以上と言うからにはストレートが速いのか、それともフォークの落ちがすごいのか。そのどれもがあてはまらなかった。真っ直ぐの最速は138キロ。甲子園に出場する高校のエースならそれくらい誰でも投げる。フォークではなく、決め球はスローカーブ。直球との球速差はなんと50キロの88キロ。大学時代は多投しなかったスライダーもコーナーいっぱいに決まった。
 2三振の広沢克己一塁手「カーブが遅いんで直球との差に戸惑った。コントロールがいい」。1安打は放ったが、まともにバットを振らせてもらえなかった池山隆寛遊撃手「ギリギリのところでストライクが取れる。変化球と真っ直ぐの差に戸惑っていると、いつのまにかやられる」。150キロ近いストレートでも、フルスイングでスタンドまで運ぶ、イキのいい若き大砲2人が、野村監督が大好きな“頭球術”を駆使する投手に翻弄された。
 「100点満点で500点です。僕も少しはできることがわかってもらえたかな」と小宮山も最高の気分だった。紅白戦では「自分のチームの選手にケガはさせられない」とインコース勝負ができず、打ち込まれたが、この日は他球団。持ち味が生かすことができた。ドラ1の活躍を大喜びしたのは金田正一監督。「ノムもびっくりしとったやろ。ええやろ、ウチのルーキー。ヤクルトは思い切り振ってくるチーム。近鉄みたいなチームや。小宮山は通じる。今年こそ打倒近鉄や」と前年89年リーグ優勝した近鉄への“刺客”のメドが立ったことにご機嫌だった。
 早慶戦を観戦して感激し、2年間浪人してまで小宮山が早稲田に入学したのは有名な話。大学にはこだわったが、逆指名が横行する中で珍しく「指名してくれる球団ならどこでも」といい、当時一番人気のなかったロッテがドラフト1位で単独指名。同じ年に8球団競合したのが野茂だった。
 球界きっての理論派。05年には新魔球「シェイク」を開発、06年には早大大学院スポーツ科学研究科に入学。投球フォームを分析するなど、あくなき探究心は真似のできるものではない。
 09年に46歳となる横浜・工藤公康投手も球界最年長投手として注目されるが、小宮山も44歳になる。ここ2年3勝ずつを挙げ、通算116勝。勝ち星がいくつ付くかよりも、現役投手であることに意味があるのが小宮山流の生き方。先発、中継ぎ、果ては敗戦処理。どんな時でも小宮山はマウンドに上がり続ける。

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