日めくりプロ野球 2月

【2月18日】1964年(昭39) ベール脱いだ“スタンケンシュタイン”パリス 負傷も猛打賞

[ 2010年2月1日 06:00 ]

54年にフィリーズ入りしたパリス。日本での通算成績は419安打66本塁打253打点、打率2割7分5厘だった
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 33歳、1メートル86の新外国人外野手は必死だった。「ここで痛いなんて言ったら、使ってもらえなくなる」。長いマイナーリーグ生活で得た経験が、自打球を当てて左足を腫らしながらも試合に出続ける決意をさせた。
 東京オリオンズ(現ロッテ)のハワイ・マウイキャンプ。新加入したスタンリー・パリス外野手はこの日がキャンプ合流10日目、初の実戦練習となる紅白戦に3番・左翼で出場していたが、1打席目で早くも“負傷”してしまった。それでもハワイのマイナーチーム、アイランダースから加わった右打者は、日本で自分の球歴を締めくくるという決意の下、痛みをこらえてレフトのポジションに入った。

 「日本流に言えば、根性があるヤツ。楽しみや」と本堂安次監督。その期待にこたえて、パリスのバットは炸裂した。自打球が当たった1打席目こそ三振に終わったが、3回の2打席目に打ち取られたカーブを三遊間に運び左前打、5回には無死一、二塁の好機に初球をたたいて左中間二塁打を放った。
 左のエース、小野正一投手を攻略した後は、9回の第5打席、今度は前年6勝の右腕・西三雄投手のカーブを左中間へサク越えの本塁打。5打数3安打3打点、紅白戦とはいえ、足の痛みを抱えながら、猛打賞デビューを果たした。
 「やるじゃないか“スタンケンシュタイン”は。パワーもあるが、変化球にも対応できそうだ。まだ結論は早いが3番でいければ」と濃人渉ヘッドコーチは満足顔。大柄で雰囲気がフランケンシュタインをほうふつさせるところから、中西勝巳投手が付けた“スタンケンシュタイン”というニックネームで呼ばれた新助っ人は、“世紀の大トレード”で阪神へ移籍した山内一弘外野手の穴を埋めてくれる強い印象をこの一戦で首脳陣に与えた。
 それが形となって開幕戦で現れた。東京五輪開催のため、3月14日に開幕したペナントレースの初戦、大阪球場での南海1回戦で敗色濃厚の東京は9回、パリスが完投勝利目前の三浦清弘投手から起死回生の同点となる来日初アーチをかけた。試合は南海のサヨナラ勝ちで終わったが、この一発ででパリスはノッた。14試合連続安打など、6月上旬には一時打率3割5分5厘まで上昇。入団時、メジャー経験がほとんどなく、マイナーで10年くすぶっていた“過去”から一番期待薄と評価された助っ人は予想を上回る活躍をみせた。
 “ミサイル打線”と呼ばれたかつてのオリオンズの破壊力満点の攻撃陣が復活したかに思われたが、執拗な内角攻めにあったパリスは後半戦にバッティングが崩れ、1年目は結局2割8分3厘、17本塁打止まり。山内の代わりを果たしたとは言いがたい数字で、球団は2年契約の見直しを図り解雇の可能性もあったが、まじめな性格と「4人目の子供が生まれたばかりで職を失うのは困る」と訴え、残留が決定した。
 2年目に25本塁打を記録したのがピークで67年に6本塁打まで落ち込み、37歳で退団。物静かで派手な言動はなかったが、日本語を積極的に覚え、ナインに溶け込もうという姿勢が日本で4年プレーできた要因でもあった。

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