日めくりプロ野球 2月

【2月17日】1980年(昭55) 山本浩二 キャンプ地に愛妻慰問でニュー打法炸裂

[ 2010年2月1日 06:00 ]

愛妻の機転でスランプを脱出した山本。王が引退した後、掛布とともにセを代表する打者となった
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 広島の日南キャンプも折り返し地点を過ぎ、いよいよ主力クラスの調整にも熱が入ってきた。休日前日のフリー打撃では3年連続40本塁打以上の主砲・山本浩二外野手が全開。センターバックスクリーンの上部に当たる、推定飛距離145メートルの特大アーチを含む11本のサク越えを記録し、上機嫌だった。

 それにしてもよく飛んだ。中堅122メートル、両翼も99メートルある広い球場でギリギリの一発はほとんどなく、すべて完璧な当たりばかり。ベンチからその様子を見ていた古葉竹識監督も驚きの様子。「新しいボールをおろしたからか、それとも高地で空気が乾燥しているからなのか…。コウジは調子がいいね。去年みたいなことはなさそうだ」とホッと胸をなでおろしていた。
 「センターを中心に打球が飛んでいれば、調整がうまくいっている証拠。バックスイングを大きく取っているので、打つ瞬間にボールを呼び込めているのがいいのかな。今年は昨年のように最初につまずかないようにする。ホント、出だしが悪いと、しんどいからね」と山本。この日は愛妻の鏡子夫人と子供たちが慰問。山本の表情が明るく、バットが元気だったのはそこにも理由があった。
 前年の79年、広島は開幕4連敗スタートとなったが、それと歩調を合わせるかのように4番山本はスランプにあえいだ。78年に巨人・王貞治一塁手を抑えて本塁打王のタイトルを獲ったことが逆に災いしたのか、元来中距離タイプの山本が一発を求められる雰囲気の中で、大振りが目立った。5月が終わろうとする頃になっても打率は2割3分台。来る日も来る日も早出特打ちの毎日。それでも結果は数字に表れなかった。
 体重が1カ月で6キロ減り、げっそり痩せた夫の姿に見かねた夫人は思い切って提案してみた。「外へ食事に連れて行ってよ」。
 広島にいる時の山本は滅多に外食しなかった。街を歩けば知らない者はいない有名人。落ち着いて食事ができないからだった。それを知っているからこそ、夫人は今まで外食しようと言ったことはなかったが「子供たちを連れて外に出れば、少しでも野球から頭が離れると思って」と考えたからだった。
 しぶしぶ出かけた山本だったが、翌日の試合で久しぶりの2安打を記録。気分的に楽になると、以後ヒットを量産し、本塁打もそれに伴って増えた。「偶然かもしれないが、ヒットが出たことで気分が変わった。今考えてみると、あれがスランプ脱出に一番効果があったかもしれない」。以後、山本家では試合のない日は外で食事をすることが多くなった。
 2年連続本塁打こそ、阪神・掛布雅之三塁手に持って行かれたが、打点113でタイトル獲得。低かったアベレージも最終的に2割9分3厘まで上がり、広島の4年ぶり優勝に4番として何とか役割を果たすことができた。
 法大4年の秋に友人の紹介で出会い、2年後に結婚。自他ともに認めるおしどり夫婦。夫人の内助の功で崖っぷちからはい上がってきたスラッガーは、快音を飛ばしたキャンプでの練習終了後、報道陣の誘いも断り、家族サービスに徹した。
 山本のバッティングはさらに磨きがかかり、80、81年は打点、本塁打の二冠王に。主砲のバットがここぞの場面で火を噴いた広島は80年、2年連続日本一に輝いた。
 

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