日めくりプロ野球 2月

【2月16日】1995年(平7) ブラッシュボールも投げた!東尾修“打撃投手”血が騒いだ!

[ 2010年2月1日 06:00 ]

キャンプで投球する東尾監督
Photo By スポニチ

 投げるたびにだんだん顔が紅潮してきた。軽く投げて打者に気持ちよく打たれていた打撃投手が、カーブにスライダー、ついには内角の厳しいコースを突くブラッシュボールまで投げた。
 慌てて避けたのは打席の垣内哲也外野手。次はキレのいいスライダーが外角へ。垣内のバットが空を切った。「どうしちゃったんだ…」。まるで実戦のような攻め方に、笑いながら見ていた西武ナインが打撃投手の形相と投球に驚きの眼差しを向けた。

 西武のハワイ・マウイキャンプは休養日。グラウンドでは1軍入りをかけて若手主体の自主練習が行われていたが、そこに新任の東尾修監督が飛び入り参加。ベンチ前でキャッチボールを始め、しばらくするとおもむろにマウンドへ向かい、打撃練習中の垣内に向かって投げ始めた。
 期待の長距離砲は恐縮しながらも快音を残しながら、右に左にいい感じの打球を飛ばした。にこやかに打球の方向を目で追っていた東尾監督だが、左中間フェンス直撃の大飛球を打たれた直後、様相が一変した。
 「おりゃあ!」「これでどうだ!」と声を上げ出すと同時に、変化球を投げてきた。これには垣内もたまらない。先ほどまでの快音は聞かれなくなり、凡ゴロやタイミングを外されてファウルにするのが精いっぱいに。「全然球が飛んでこねぇなぁ。監督まだ現役でイケるんじゃないの。若い投手よりいい球なげるわ。それにしてもカキ(垣内)も腰引けちゃってるよ。あのシュートがきたら、そりゃビビるよね」。レフトで球拾いをしていた森繁和投手コーチが半分感心して、半分あきれながら2人の“対戦”を分析した。
 最後の69球目。東尾監督の現役時代の決め球、スライダーに垣内は空振り。引退から6年、通算251勝投手は満足そうにマウンドを降りた。西武でも清原和博内野手と飛距離では双璧の垣内だが、ついにサク越えはゼロ。空振りも2つ奪った。若手の成長に一役買うはずが、最後は若い選手にプロの厳しさを教えることになった15分間だった。
 「いやあ、疲れたけど気持ちよかったよ。投げているうちに最後の方は血が騒いじゃったよ。ブラッシュボール?だってキャッチャーがそこに構えるんだもん。今度は清原と勝負するかな」と、試合後のヒーローインタビューのごとく口調が滑らかな東尾監督。すっかり監督の引き立て役になってしまった垣内は「すごい球でした。完全に牛耳られましたね。ビュンビュンきていたし、変化球のコントロールはさすがです。参りました」とすっかり脱帽した。
 ハワイの気候の良さに誘われての東尾監督のマウンドだったが、バッティングケージ横で見ていた、かつての女房役伊東勤捕手は真顔で言った。「(1軍の)11人枠に入れるよ。マジで…」と現役復帰も可能と太鼓判を押した。
 監督の現役復帰はさすがになかったが、指揮官にやられた垣内はこれに発奮したのか、95年のシーズンに自己初の2ケタとなる14本塁打を放ち、レギュラーへの足がかりをつかむと、翌96年に初の規定打席に達するとともに28本塁打を記録した。練習休日の“余興”はチームに大きな成果をもたらした。

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