日めくりプロ野球 2月

【2月8日】2003年(平15) 巨人偵察隊逃げた!岩村明憲、1300グラムでガンガン!

[ 2010年2月1日 06:00 ]

1300グラムの赤バットを握り打撃練習をする岩村。これが後々致命傷になるとは思わなかったに違いない
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 手首がどうかなってしまわないのか、と見ている方がハラハラするほど、背番号1が振り回しているバットは重かった。試合で使用するバットよりなんと350グラム増の1300グラム。ヤクルト・岩村明憲内野手は、特注のマスコットバットでフリー打撃に臨んだ。

 32スイングでスタンドインはわずかに1本。振り切るのでさえ容易ではない規格外の重さ。「ホンマ、キツいわ。あり得ない重さやからね。でもたかが1300で痛めるようなヤワな手首やない。とことん振るで。ピッチャーに対して振りまけたくないからな」。時折顔をしかめながらもフルスイング。真剣な眼差しに、現役時代首位打者2回の若松勉監督でさえ声をかけにくい、独特の雰囲気が岩村の打席に漂っていた。
 入団6年目の02年初の全試合フルイニング出場を果たし、打率3割2分、23本塁打、71打点でベストナインに選ばれるなど結果を残した。さらなる飛躍をするには…岩村は考えた末にスイングスピードをアップして飛距離をアップすることに着目。超重量バットで練習することによって、試合で使う950グラムのバットを軽々振り抜けるようにと、この練習を思いついた。
 スポーツメーカーの担当者が舌を巻いたのも無理はない。「マスコットバットを使って打撃練習を行う選手はそんなに珍しくはないが、元巨人の松井選手でも1キロちょっと。1300グラムは例がない」ただ驚くばかり。驚嘆したのは業者だけではない。偵察に来ていた巨人の関係者は、岩村が素振りをしているのを目の当たりにしただけで、席を立った。
 「岩村?もう、見ない方がいい。素振りを見ただけで分かる。見るのが怖い。とにかく体が大きくなった。年々成長しているが、ウチの高橋由伸外野手のように進化している」と、岩村が放った打球の快音だけを耳にしながら退散した。
 翌9日は岩村の誕生日。毎年ちょうどキャンプの休日に当たってしまい、いつもオフだったが、この日は練習がありさらに燃えた。117スイング中38発をスタンドに放りこんでみせた。
 ハードなキャンプ、そしてオープン戦を乗り越えて迎えた、そして3月28日の開幕戦。5番・三塁スタメン出場の岩村にアクシデントが起こった。9回の4打席目、広島・黒田博樹投手のストレートを強振した際に、右手首に激痛が走った。診断の結果、骨折ではなかったものの、全治2カ月の重症。即座に登録抹消となり、フルイニング試合出場は187試合でストップした。
 予兆はあった。オープン戦で通常の950グラムのバットを振った際に、手首が異常に返り過ぎたことがあった。“これはマズい”と思って、マスコットバットを使わなくなったんだけど…」。完治までに時間がかかり、1軍復帰をしたのはオールスター明け。なんとか12本塁打を放ったものの、最悪のシーズンだった。
 翌04年、復活を期した岩村のバットはさく裂。44本塁打は球団タイ記録、打点103は本塁打と並んで、後に先にも岩村にとっては最高の数字だった。
 10年は新天地、ピッツバーグ・パイレーツでメジャー3年目。研究熱心なガンちゃんがどう進化するか楽しみである。

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