日めくりプロ野球 12月

【12月25日】1983年(昭58) 入団前に…水野雄仁、いきなり怒鳴られた

[ 2009年12月1日 06:00 ]

87年には10勝をマークし、王監督の巨人での初優勝に貢献した水野。通算39勝と鳴り物入りで入団した割にはもの足りない数字だったが、日本シリーズでの好投など印象深い右腕だった
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 入団発表会見を前に巨人のドラフト1位、徳島・池田高の水野雄仁投手、2位の長崎・佐世保工高・香田勲投手ら新人選手が川崎市のよみうりランド内にあるジャイアンツの合宿所を見学に訪れた。
 巨人の合宿所といえば、名物は武宮敏明寮長。83年には寮長職を譲っていたが、“東京のオヤジ”を自認する元鬼寮長に水野がいきなり洗礼を浴びた。

 「カツヒト!」と名前を呼ばれた水野は「はい」と返事をしたが、直後にオヤジの雷が落ちた。「声が小さい!プロは返事の声が大きいほど見込みがあるんだ!そんな小さな声じゃやっていけんぞ!この寮には竹刀が置いてあるが、その返事だとタンコブだらけになるぞ!」。
 武宮前寮長の代名詞、竹刀の“制裁”までちらつかせられたゴールデンルーキー。だが、甲子園で夏春連覇を達成し、投打に大暴れした“阿波の金太郎”は脅しにも涼しい顔でかわした。「門限破りすると(竹刀で)叩かれる?僕は優等生だから大丈夫ですよ(笑)。まあ、2、3発叩かれるだけで済むならいいんじゃないですか?来年が楽しみです」と特別気にしている様子もなかった。
 武宮前寮長は“女性関係”でもクギを刺した。「巨人はマスコミから必要以上に注目される。巨人の選手であることを一時も忘れてはならん。特に東京の女の子だけは絶対に相手にするな。多摩川にも毎日ワーワーキャーキャーギャルが押しかけてくるが絶対ダメだ。年ごろになったらいい嫁さんを世話してやる」。新人選手全員に諭した武宮前寮長だったが、甲子園でも追っかけギャルに囲まれ、ファンレターが1日50通届けられる水野のことを想定しての戒めだった。水野も負けていない。「東京の女の子じゃなかったらいいのかなあ…」と、寮の見学を終えると屁理屈を言って笑ってみせた。
 「タイプは違うけど(池田高監督の)蔦先生みたいや」と頑固オヤジを評した水野。武宮前寮長もその肝っ玉の太さはひと目で見抜いていた。「久しぶりにやんちゃ坊主が入ってきたわい。楽しみ?もっとすごいヤツおったからね」と笑ったが、鍛えがいのある新人右腕に出会った喜びがにじみ出ていた。
 キャンプ初日に新人担当の山本和雄コーチから「礼儀がなっとらん」とゲンコツを食らい、6月のイースタンの試合では送りバントの後に全力疾走をしなかったということで国松彰2軍監督に3発ビンタされた水野。10月の秋季キャンプ初日も同室の斎藤雅樹投手と寝坊して朝の散歩に遅れた。
 1年目からやらかした背番号31がやっとプロ野球選手として本当の意味の第一歩を踏み出したのは、ナゴヤ球場での中日戦で初勝利から8勝をマークした86年。プロとして自覚が出てくるまでやんちゃ坊主は3年の歳月がかかった。
 いきなり水野を怒鳴りつけた鬼寮長・武宮はその成長振りを見届けるかのように、この年巨人を退団。郷里の熊本へ戻った。

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