日めくりプロ野球 11月

【11月30日】1983年(昭58) ストッパー倉持明、本業は自由契約もCMは契約延長

[ 2008年11月29日 06:00 ]

頭髪とともにヒゲがトレードマークだった倉持。ロッテからクラウンに一度トレードされ、出戻っての活躍だった
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 成績が良くても、来年は自分が野球でメシを食べていけるかどうか分からないプロの世界。3年前、ロッテの前期優勝に貢献した80年のセーブ王、口ひげがトレードマークの“ヒゲクラ”こと倉持明投手がわずか移籍1年でヤクルトから戦力外通告された。まだ31歳。右ひじ痛も完治し、再起をかけて立ち上がろうとした矢先の非情通告だった。

 妻と2人の子どもを抱えて悩む毎日。一気に収入の保証がなくなるわけだから途方に暮れるものだが、倉持には当面糊口をしのげる副収入があった。頭髪の薄い倉持は81年からかつらメーカー「アートネイチャー」のモデルとなり、テレビCMなどに出演。年間の契約金は800万円と1000万円強の年俸に匹敵する額が自動的に入るようになっていた。
 しかし、本業の野球は解雇。副業も打ち切りかと思いきや「倉持さんのキャラクター性を高く評価している。ユニホームを脱いでも契約します」と社長自ら契約継続を宣言。倉持をCMに起用後、売り上げも上がったことで、こちらは“続投”となった。
 アートネイチャーが倉持に目をつけたのは、80年前期優勝したロッテの祝勝会でのこと。ビールを頭からかけられ、はしゃぐ倉持だったが、担当者はそのはじける笑顔とは対照的な、寂しい頭髪に目がいった。担当者はピンときた。倉持が登板するのは、1点をめぐる攻防が繰り広げられる厳しい場面ばかり。抜け毛の原因の一つともされるストレスはかなりのものだろう。それでもストッパーで頑張る倉持をCMキャラクターに起用すれば、ストレスと日々戦いながら働く世の男性に勇気を与え、共感を得られるはずだ。しかも、優勝の立役者になり、顔も売れている。担当者はシーズン終了を待って倉持にCM出演の依頼を打診した。
 複雑な気持ちになった倉持だが、夫人に相談したところ「開き直ってやってみたら」と勧められ、本人も「髪の毛のことで困っている人がいるなら」と意を決して契約。スポーツ刈りやカーリーヘアなどさまざまなタイプのかつらを付けてCMに登場。すると「野球選手がかつらのCMに出ている」と子供たちの話題にものぼり、一躍人気者に。当時、テレビCMといえば、巨人や阪神の選手が多かったが、ロッテという比較的マイナー球団の選手が登場したことで、その後巨人以外の選手がCMで活躍するきっかけにもなった。
 82年の開幕戦前には頭髪の薄い人が集まり「倉持選手をハゲます会」も発足。この年のオフにヤクルト・西井哲夫投手とのトレードでセ・リーグに移ると「巨人戦もあるし、今度はテレビの露出も多くなる」とアートネイチャー側は大歓迎するほどだった。
 しかし、80、81年とロッテの前期優勝に貢献した右腕は、持ち場のリリーフで失敗を重ねると、秋には見切りをつけられてしまった。通算206試合17勝21敗40セーブ。右手人差し指、中指のマメがつぶれやすいという“持病”に悩まされ続けたが、ウイニングショットのパームボールは絶品だった。 引退後は保険業などに携わり、現在はチバテレビで古巣ロッテ戦の解説を務める。的を得た言葉と投手ならではの野球の見方を説く内容は、ファンの間で評価が高い。

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