日めくりプロ野球 10月

【10月23日】1981年(昭56) 13安打浴びても完封 西本聖 絶妙シュート攻めで4併殺

[ 2010年10月1日 06:00 ]

 【巨人9―0日本ハム】136球目のストレートは外角低め。日本ハムの代打、山本桂内野手はバットを出したものの、申し訳程度。全くついていけず、空振り三振となると、マウンド上の巨人・西本聖投手は右腕で派手なガッツポーズをつくり、喜びを爆発させた。
 2勝2敗で迎えた日本シリーズ第5戦。勝てば王手をかける大事な一戦で西本は再三走者を許しながらも見事シャットアウト勝ち。巨人投手陣の完封勝ちは70年(昭45)10月27日、ロッテとの第1戦(後楽園)で堀内恒夫投手が延長11回を投げ切り記録して以来、11年ぶりの快挙で、8年ぶり日本一へあと1勝となる大きな白星だった。

 第2戦でトニー・ソレイタのソロ本塁打による1失点で2安打完投勝利を挙げた。が、第5戦は勝手が違った。初回こそ三者凡退も、2回以降は毎回安打を浴びた。それでも西本は点を与えなかった。「状況が悪ければわるいほど僕は燃える。だからプレッシャーを感じている暇はない。ここまで自分を痛めつけ、頑張ってきたからこそ勝てたんだと思う」。調子が良くないならないで、工夫をしながら試合をつくる。その気持ちの延長が完封勝利へとつながった。
 その真骨頂が発揮されたのが、2回の投球だった。無死一、三塁のピンチに6番古屋英夫三塁手を投ゴロに仕留めると、スタートを切っていた三塁走者の柏原純一一塁手を本塁で刺し1死。続く大宮龍男捕手には左前打を打たれ満塁となったが、8番高代延博二塁手は、三ゴロ併殺打で切り抜けた。二塁打1本、単打2本を許しながら無失点で終わらせたのは、西本の伝家の宝刀シュートだった。
 日本ハムも第2戦でシュートにやられたことからこれに対応し、13安打のうち多くがシュートを打ったものだった。それでも投球パターンは変えなかった。シュートを狙っている打者に敢えてシュートを投げた。ただ忘れなかったのは、走者を出した場合、より低めを突いたこと。これが奏効し、バットの芯より下に当たった打球は多くが内野ゴロに。18個のゴロアウト、特に日本シリーズタイ記録となった4つの併殺打を打たせ、敵将・大沢啓二監督をして「恥ずかしい試合をやっちまった」と言わしめる好投につながった。 第6戦に勝った巨人はV9達成の73年以来の日本一となった。4勝のうち西本と江川卓投手で2勝ずつを挙げたが、MVPは投球内容からみて文句なく西本が選ばれた。トヨタ自動車から当時240万円だった「クラウンハードトップ」が贈られ、そのほかスイスの高級時計、七宝焼のカップ、高級紳士服地、明治製菓から菓子1年分、さらに金一封とトロフィーの計350万円相当の賞品を手にした。この年沢村賞にも選出された。
 米ベロビーチキャンプ中、夫人が自宅のガス爆発事故でやけどを負い入院。緊急帰国したが、その翌日から焼け跡からグラブを探し出し、焦げたジャージを見つけ出してトレーニングをした。「僕はプロ。女房に付き添ってばかりだと逆に心配をかける。これでシーズンに入って勝てなかったら、それこそ申し訳ない」と練習は休まなかった。シーズン18勝とシリーズの2勝で計20勝。ドラフト外入団から7年目、入団会見ではひな壇の後列に立たされ、うつむいていた高校生は最高の笑顔で後楽園球場をゆっくりとオープンカーで一周した。

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