日めくりプロ野球 10月

【10月23日】2000年(平12) 流れを変えた長嶋茂雄監督の「シャッフル」

[ 2009年10月1日 06:00 ]

先制の2点本塁打を放った高橋由(右)は清原(左)らに手荒い祝福を受けた
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 【巨人9-3ダイエー】「自分が打てないことで負けていた責任は感じていた」。2試合9打数無安打の巨人・高橋由伸右翼手に、シーズン中にもなかった6番降格となったゲームで最初の打席が回ってきたのは、ダイエーが2連勝して迎えた日本シリーズ第3戦、2回1死一塁の場面だった。
 降格して燃えたというより「平常心を保つことが大切だと思った」と高橋由。プロ入り後、ガムをかみながら打席に入ったのも、そうでもしなければ緊張で押し潰されそうだったからだった。

 何とかしようと力まなかったのが好結果を生んだ。ダイエー・ラジオ投手の内角寄りのボールをコンパクトに振りぬいた打球は、福岡ドームの高いフェンスの上を越えてスタンドへ。10打席目にしてシリーズ初安打となった一撃は、長嶋茂雄監督が待っていたの一撃でもあった。
 ベンチで頭をポコポコ叩かれる手荒い祝福を受けた高橋由は「とにかくホッとした。もうこのシリーズは1本も打てないんじゃないかと思っていたくらいだったから」と初めて心からの笑顔を見せた。
 東京ドームでまさかの2試合連続逆転負け。20世紀最後の日本シリーズ、しかも野球ファン注目のダイエー・王貞治監督とのON決戦でこのまま1つも勝てないと思わせるくらい、長嶋監督にとってもショックな連敗だった。
 問題は打線のつながりにあった。第3戦を前に長嶋監督は決断した。「短期決戦は明日がない戦い。打線をシャッフル(組み替え)しよう」。コーチ陣にほとんど相談なし。長嶋監督の独断だった。
 その“荒療治”の1つが高橋由の6番だった。空席になった3番には清原和博一塁手を入れ、1、2戦で当たりのなかった清水隆行左翼手、江藤智三塁手をスタメンから外し、後藤孝治左翼手、元木大介三塁手を起用。パ・リーグの本拠地で指名打者が使えることから5番にマルティネスを入れた。
 シャッフルした打線を発表した長嶋監督は試合開始直前、ナインにゲキを飛ばした。「いいか、ダイエーよりお前たちの方が絶対に強いんだ。自信を持って行こうじゃないか」。視線をそらさずに高橋由はジッと指揮官の熱い言葉を聞いていた。
 音なしだった高橋由の一撃はチームの雰囲気をガラリと変えた。3点を先取した巨人はその裏、城島健司捕手の3試合連続となる3点本塁打で同点とされたが、3回に先頭の清原の左前打、高橋由の右前打でチャンスを広げた巨人は8番二岡智宏遊撃手からの3連打で4点を奪取。立ち直った先発の上原浩治投手が好投している間に、4番松井秀喜中堅手が7回にトドメの2点本塁打を放ち、巨人はシリーズ1勝目をマークした。
 「これで硬さもとれて伸び伸びやってくれるでしょう。シャッフル?当たりましたね、デヘヘヘへ…」と作戦が大当たりしたミスターは上機嫌。ようやく1勝目だったが、この1勝が流れを変えた。
 第4戦で接戦を制すると、第5戦は高橋由が再び先制弾を放つなど3打点で3連勝を飾ると、東京に帰った第6戦に勝ち、日本一。89年以来11年ぶりに連敗からの逆転V確率10%(当時)を成し遂げた巨人。長嶋監督にとって監督2度目の日本一は、劇的な最後の胴上げでもあった。

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