日めくりプロ野球 10月

【10月17日】2005年(平17) 解任から10年 バレンタイン監督、栄冠勝ち取る

[ 2008年10月15日 06:00 ]

31年ぶりの優勝を果たしたロッテのボビー・バレンタイン監督は祝賀会で西岡にビールを頭からかけられ喜びもひとしお
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 【ロッテ3-2ソフトバンク】伝説の“ラッキーエイト”がここ一番でよみがえった。
 「これが最後かもしれない。思い切り振るだけ」。そう言い聞かせてはみたものの、プロ17年目、既に引退を決意していたロッテ・初芝清内野手はガチガチに緊張していた。8回、1-2と1点ビハインド。負ければプレーオフ第2ステージ2連勝から悪夢の3連敗。12球団最長となる31年間優勝から遠ざかっているチームはさらに記録更新してしまう。1度も優勝を経験しないでプロ生活を終わりたくない。初芝の切実な思いが野球の神様に通じた。

 「しまったぁ!」。思い描いたとおり強振したが、ソフトバンクの左腕・三瀬幸司投手の速球の前にボテボテのゴロが三遊間に転がった。トニー・バティスタ三塁手、川崎宗則遊撃手がそろってダッシュ。2人が捕球態勢に入ったところにちょうどボールがきた。つんのめりながら一塁に駆け込んだ初芝。振り向けば、一塁塁審は手を横に広げている。バティスタと川崎が交錯したことで、幸運な内野安打になった。
 “ラッキーエイト”の予感の中、3番・福浦和也一塁手が右前打で続く。次は“つなぎの4番打者”サブロー中堅手。ソフトバンクも三瀬から守護神・馬原孝浩投手にスイッチした。間違いなく送りバントのケースだったが、ホビー・バレンタイン監督にそのセオリーは関係なかった。
 強攻策の結果は二塁ファウルフライ。4回に併殺打を打っているサブローに硬さがあり、バットが思うように出なかった。
 しかし、これがボビーの野球、これが05年版マリーンズの攻撃セオリーだった。だから強攻して失敗してもベストを尽くしたのなら責めない。指揮官の姿勢は、この最終決戦でクリーンアップに初めて入った、里崎智也捕手の思い切りの良さを導き出した。「2勝2敗の対決は甲子園の決勝のよう。思い切りやるだけ」。“シビれる”場面を楽しむように打席に入った右打者は馬原の初球、147キロのストレートにバット一閃。グングン伸びた打球は左中間を深々と割った。二塁走者の初芝に続き、一塁走者の福浦も三塁ベースを蹴った。的場直樹捕手がホームベースをがっちりブロック。福浦は体当たりするようにホームへつっこんだ。
 タイミングはアウト、だったがブロックをかいくぐって福浦の足が先にホームに入った。柿木園(かきぞの)悟球審の腕が横に大きく広がった。半分泣き出しそうになりながら、初芝と福浦がハグ。逆転だ。重苦しい空気を打ち破った2人の激走に、わざわざ千葉から駆けつけた「26番目の戦士」、マリーンズファンの胸は熱くなり、あらん限りの声で叫んだ。「これで優勝だ!」。
 1974年(昭49)、金田正一監督率いるロッテオリオンズは8回になると監督自ら三塁コーチすボックスに立ち、ナインの士気を鼓舞。逆転勝ちへとつながる試合が多かった。31年前の伝説が最後の最後でよみがえったロッテ。さあ、あとは9回の守りだ。
 誰もが2日前のことを思い出していた。勝利を目前にして守護神がまさかの4失点。1つの黒星がプレーオフの流れまで変え、最終戦までもつれ込ませた。しかし、これもボビーの野球、これも05年版マリーンズの守りセオリーだった。マウンドには火だるまになった小林雅英投手が上がった。
 「(信用を)取り返すにはここしかない」。先頭打者を歩かせたが、後続は内角を突くシュートで攻めた。ソフトバンク・川崎の力ない飛球を井上純左翼手が捕球した瞬間、両手を点に突き上げ、雄叫びを上げた。31年ぶりの優勝は、いくつもの失敗が重なっても、それを挽回のチャンスを与えてた指揮官とそれに応えた選手の信頼と強い気持ちの集大成が形に表れたものだった。
 バレンタイン監督は言う。「リードされて嫌な雰囲気になりかけたところで初芝がガッツを見せて出塁してくれた。流れが変わりかけたところで里崎が打ったのも気持ちで勝ったからだ。小林雅英は打たれても、マリーンズの抑え投手です。リードすれば、彼で勝利をつかみに行きます。彼がいい仕事をしたのはガッツを前面に出し逃げなかった結果です。いい仕事をしてくれて大変満足しています」
 127通りの打線の組み替えやバントを極力避け、執拗なまでのヒットエンドランとスチール--。“ボビーマジック”とまでいわれた、積極果敢な攻撃も選手との対話も、すべては「ガッツを前面に出して死力を尽くして戦う」という監督の姿勢をチームに徹底させるためだった。
 10年前のこの日、1995年10月17日にバレンタイン監督はチームを10年ぶりに2位に押し上げたにもかかわらず、球団首脳との確執でロッテの指揮官を正式に解任された日だった。10年かかって勝ち取った異国での栄冠。ロッテの怒涛の進撃はととどまるところを知らず、日本一、アジアシリーズ制覇へと続いた。

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