日めくりプロ野球 10月

【10月2日】1988年(昭63) 42年ぶりの快挙 19歳ルーキー野村弘「特別良くないですよ」

[ 2010年10月1日 06:00 ]

 【大洋4―0広島】最速は138キロ。プロの投手としては遅い部類だ。2回と8回を除けば毎回ヒットを打たれた。それでも広島打線を無得点に抑え、気がつけば122球で完封勝利を挙げた。
 大洋のドラフト3位ルーキー、弱冠19歳の野村弘(後に弘樹)投手がプロ初登板初先発でシャットアウト勝ちを収めた。「調子?特別良くはなかったですよ。緊張?しても仕方がないので開き直って投げました。僕なんか打たれて当然ですから」。

 プロの恐ろしさをまだ知らないといえばそれまでだが、肝っ玉のすわった新人左腕の言動はどこまでも大胆。大阪・PL学園高では甲子園で春夏連覇。巨人・橋本清投手らのリレーで勝ってきたチームだったため、尊敬する2年先輩の巨人・桑田真澄投手のような絶対的エースではなかったが、落ち着いたマウンドさばきはそれなりに舞台を踏んでいるという雰囲気をかもしだしていた。
 ストレートがそれほど早くない野村が完封でプロ1勝目をマークした要因は制球力だった。「オレの構えたところにドンピシャで投げ込んでくる。ルーキーであんなにコントロールのいいヤツは見たことがない」。ベテランの若菜嘉晴捕手は絶賛。8安打を浴びながら無四球だったことで、最後まで崩れず自分のペースで投げられた。
 プロ初登板初完封はプロ野球史上23人目。これだけでもすごいが、無四球となると、プロ野球が復活した1946年(昭21)4月28日、慶大出身のセネタース白木義一郎投手がゴールドスターズ相手に5安打完封をした試合以来、実に42年ぶり。セ・リーグでは初の快挙となった。
 オープン戦で15イニング無失点、ルーキー大賞を受賞。開幕1軍を勝ち取ったも同然だったが、高校の時から患っていた腰痛でファームへ。思いのほか長引き、キャッチボールを再開したのは7月。イースタンリーグでは4試合登板、最長5回までしか投げていなかった。
 「5回で代えるつもりだったのにあまりにもいいから」と大洋・古葉竹識監督。故郷の広島相手に完封した野村をリトルリーグで指導したのは、古葉監督の弟という因縁まで付いた。「1軍といっても、もう消化試合みたいなものだから」とまるでベテランのような口ぶり。初勝利の余韻に浸っている様子は微塵もなかった。
 通算101勝を記録し、03年に引退。巨人キラーとしての印象が強いが、ジャイアンツ相手には24勝。カープ相手では30勝と最初の完封以来、相性は抜群だった。100勝投手としては珍しく、奪三振が1000に届かず、998止まり。ボールが速くなくても、制球がしっかりしていれば、プロでメシが食えることを証明した。

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