日めくりプロ野球 9月

【9月21日】1981年(昭56) 小松辰雄 巨人を174で止めて星野仙一から10万円ゲット

[ 2010年9月1日 06:00 ]

 【中日4―0巨人】4年ぶりの優勝を目前にした巨人相手に被安打4、三塁を踏ませずシャットアウト。入団4年目にして初完封勝利の中日・小松辰雄投手はマウンドで派手なガッツポーズを見せた。
 完封は言うまでもなく、小松にとってさらに嬉しいことがあった。「最高の気分。それに二重三重の喜びです。なにせ仙さんから10万円もらえますからね」。投手コーチ補佐の肩書きが付いていた、星野仙一投手から約束の“賞金”を獲得した、22歳の若武者は笑いが止まらず、何度も何度も「嬉しい」を連発した。
 ただ巨人を完封しただけで10万円をプレゼントするほど、星野も甘くはない。「ジャイアンツの記録をストップしたら」という条件が付いていた。巨人は前年80年7月31日の大洋戦(後楽園)で斉藤明雄投手に完封負けして以来、174試合連続で得点をマーク。それまでのセ・リーグ記録だったヤクルトの143試合連続得点記録を破り、日本記録である近鉄の215試合に挑戦していた。
 その巨人をゼロに抑えたら10万円。7月から先発に転向し、4完投を含む6勝をマークした小松にとって燃えないわけがなかった。 前日の20日、まず星野が記録ストップに立ちはだかった。結局3点を失い成功せず、その後を受けての小松の先発だった。
 星野は小松に巨人打線封じのヒントを与えた。「巨人打線はオマエのスライダーを狙っている」。前回8月27日の登板を見てそう感じていた星野は小松にピッチングのイメージチェンジをうながした。
 アドバイスは効果てき面だった。前半は意図的にストレートで勝負。最速148キロを記録し、4回まで被安打1。これでペースをつかんだ。5回に真っ直ぐ狙われ2安打を打たれ、この試合唯一のピンチを迎えると、スライダーに切り替えた。終盤はフォークボールも織り交ぜ、7回以降は1人も走者を許さなかった。
 「力まないで八分の力で投げるようにした。最近それでけっこうイケることに気がついた。ピッチングが楽しくなってきた」と小松。優勝戦線から遠い位置にいた近藤貞雄監督は「言うことなし。巨人のこの記録を止めることぐらいしか楽しみがなかったから、よくやってくれた。投球のコツを覚えたようだ。来年が楽しみ」と若きエースの成長を喜んだ。
 「やりおったな小僧。巨人をシャットアウトできるのはオレしかおらんと思っていたが…でも完璧やったな」と星野。10万円をとられたことを半分悔しく、半分嬉しく思っていた“燃える男”だったが、星野は翌年8年ぶりのリーグ優勝を花道に引退。背番号20はその2年後の84年から小松に受け継がれ、ドラゴンズのエースナンバーとしてチーム内では特別な背番号となっている。

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