日めくりプロ野球 9月

【9月17日】2008年(平20) 谷間のさらに谷間 東野峻 初先発初勝利

[ 2010年9月1日 06:00 ]

 【巨人6―2横浜】巨人の抑え、マーク・クルーン投手が横浜・石川雄洋二塁手を二ゴロに打ち取ると、ベンチにいた背番号93はチームメイトにポンポン頭を叩かれた。
 4年目の東野峻投手が横浜22回戦(横浜)でプロ初先発初勝利を挙げた。「初回は緊張した。2回以降は腕が振れてボールも走りました。行けるところまで行こうと思ったけど、ちょっと出来すぎですね」。6回103球を投げ、2安打7三振2四球。首位打者の内川聖一一塁手にはプロの厳しさを教えられる2点本塁打を浴びたが、ヒットを打たれたのは内川のみ。完璧に横浜打線を抑えた。

 9連戦最後の試合。6連勝で首位阪神に3ゲーム差に迫った巨人だが、その代償として先発投手陣を使い果たしていた。前日16日は、シーズン初先発の久保裕也投手がスターターとして登板し好投。17日のローテーションではグライシンガー投手の番だが、19日からの天王山となる阪神戦に回す必要があった。
 原辰徳監督が出した結論は、中継ぎで23試合投げてきた東野に1試合任せることだった。9月10日の中日戦で負け試合ながら3回を投げ、タイロン・ウッズ一塁手にソロ本塁打を浴びるも6個の三振を奪った。原監督は「次はもっと長い回を」と密かに決めていた。当日、球場で尾花高夫投手コーチから先発を言い渡されたが、内心「オレに回ってくるかもしれない」という予感はあったことで、気持ちの準備はある程度出来ていた。
 言葉は悪いが、実績のない東野の先発はローテーションの谷間も谷間。とにかく試合を壊さないでくれと、ベンチはそれだけを思っていた。ところが、である。常時140キロ台後半のストレートとスライダーを中心にカーブとフォークを織り交ぜ、横浜打線を3回までパーフェクトに抑えた。両サイドにきっちり投げられる制球は、初めての先発とは思えないほどだったが、6月から1軍にとどまり、実戦経験を積んで勉強してきたからこそできたナイスピッチングだった。
 茨城・鉾田一高から04年にドラフト7巡目入団。巨人で最後に指名された選手だった。自由枠入団の野間口貴彦、三木均両投手が注目される中、背筋力が入団時の松井秀喜外野手を上回る315キロあるということだけが取り上げられた高校生投手という存在。3年目に1度1軍入りしたが、4年目に入ってもファームでさえ未勝利。それでも本人には手応えがあった。「体調もいいし、ボールもキレている」。
 ストレートで押しまくるタイプだったが、それだけではやっていけないスピードだと悟り、スライダーを磨き、目先を変えるために高校の時に投げていたカーブを再度使い、フォークを覚えた。
 この年2勝をマーク。オフには年俸が3倍近くアップし、背番号はかつて槙原寛巳投手が付けていた17番になった。「沢村栄治投手が元々付けていた番号。将来、そういう投手になってもらいたい」。原監督から直々に17番を与えられた意味を東野は聞いた。(プロ野球の公式戦が始まる前年の1935年沢村は永久欠番となる「14」ではなく「17」を付けていた)。
 沢村がかつて快速球とともに武器にしたのが、縦に大きく割れるカーブ、いわゆるドロップ。東野のカーブも同タイプのものだ。いつかは沢村のように…。09年8勝、10年12勝(9月17日現在)とステップアップは着実にしている。

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